正木智也の現状が浮かんだ“真顔のアーチ” 覚悟を感じた凡フライ後の姿「本当にヤバいと」

正木智也【写真:竹村岳】
正木智也【写真:竹村岳】

待望の一発の後に見せた予期せぬ表情

 待望の一発にも、笑みはこぼれなかった――。17日に行われた中日とのオープン戦(みずほPayPayドーム)。正木智也外野手のバットから放たれた打球は、大きな放物線を描いてライトスタンドへと吸い込まれた。

 試合前までのオープン戦成績は29打数5安打の打率.173。本塁打、打点はともにゼロと不振に苦しむ中で生まれた逆転3ランだった。それでもダイヤモンドを一周してベンチへ戻ってくる背番号31の顔に、喜びの色は感じられなかった。なぜ正木は笑顔を見せなかったのか。試合後、その心中を明かした。

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待望の一発後、正木が明かした本当の「危機感の正体」
近藤選手も実践する、打撃フォームの「秘密」
凡打でも走る正木に染み付いた「小久保監督の教え」

「いやもう本当に『打たないとダメだ、ヤバい』と思いながらやっていたので、笑顔はないですね。たった1本出ただけですし。打てている中でのホームランだったら多分笑顔だったんですけど、打っていないので。『まだ一安心じゃないぞ』という感じでした」

 そう語る表情には当然、笑顔はない。周囲がホッと胸を撫で下ろすような一撃であっても、自身の心にある危機感は一切拭えていなかった。だからこそ“油断したような”表情を見せるわけにはいかなかった。

 この日の打撃は、正木が取り組んでいることの成果を感じさせるものでもあった。「エクステンション」と呼ばれるスイングの意識だ。「インパクトから右腕を伸ばしていく形です。近藤(健介)さんとかもよくやっているんですけど」と身振り手振りを交えながら明かした。右腕を伸ばすことで、インパクトの幅を後ろから前へ広げるイメージ。2月に放った台湾での一発や、この日のホームランには、その成果が確かに現れていた。

見据える立ち位置…「僕は頭から出る選手だと」

 正木自身、右打ちの外野手としてのプライドがある。「僕は頭(スタメン)から出る選手だと思っていますし、後から行くタイプではないので」。山川穂高内野手や今宮健太内野手など右の強打者はいるものの、チーム全体としては左打者が多い事実を受け止め、自らの役割を理解している。「(佐藤)直樹さんが抜けられたことで右の外野手枠が少なくなって、その分期待されているということかもしれないですけど。だからこそ頑張らないといけないなという思いでいます」と前を向く。

 昨季の4月18日の西武戦で左肩を負傷し、亜脱臼と診断された。その後に「バンカート修復術」を受けたが、今でもサポーターをつけて試合に出場する。「怖さはもう、全然ないです」と口にするものの、医師からはダイビングキャッチなどに備えて、装着を薦められているという。

 そんな正木の野球に対する真摯な姿勢は、凡打した時にも現れる。フライを打ち上げた際でも、必ず全力疾走で一塁を回り、二塁まで向かう。

「大学時代は当たり前にやっていましたけど、ホークスに入って『プロでもやるんだ』と感動を覚えた経験があります。入団1年目の2軍監督が小久保さんでしたし、そういうことを大事にされていたので。それは染み付いているという感じですね。それがチームのルールでもあるし、先輩方のそういう姿も見ているので。絶対にちゃんとやらないといけないなという思いで毎回走っています」

 野球人としての基本を徹底するその背中を見ていると、背番号31への期待は自然と膨らんでいく。この日の試合後、小久保監督は「きょうの1本で変わってくれることを期待しますよね」と語った。開幕まで、オープン戦も残り4試合。正木が完全に復調し、万全の状態で開幕を迎えてくれることを願わずにはいられない。

(飯田航平 / Kohei Iida)