城島健司CBOを単独取材…栗原陵矢の捕手挑戦についても説明
パ・リーグ3連覇と、2年連続日本一を目指すホークス。その礎を築く2月の春季キャンプで、大きな話題を集めたのがイヒネ・イツア内野手のコンバートだった。大型遊撃手として期待され、ドラフト1位で入団した背番号36は、その俊足と強肩を生かすべく外野へ挑戦。小久保裕紀監督も「1軍で使うとなった時に、できることをフロントと話しました。ショート、サードのスタメンで使う可能性は、ほぼゼロに等しい」と断言していた。
現場とフロントが意思を通わせ、下された大きな決断。鷹フルでは城島健司CBOを単独取材し、一連の経緯と狙いを徹底的に掘り下げた。「残念ながら、プロ野球は平等じゃないんですよ。彼の場合は、トッププロスペクトなので」。イヒネ育成のモデルケースとなるのは、昨シーズン1軍に帯同しながら、成長を遂げた庄子雄大内野手の存在だ。そして、栗原陵矢内野手の捕手挑戦についても具体的に言及。球団が抱くビジョンとは――。独自インタビューの全文は以下の通り。
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続きの内容は
成長曲線が下がらない? 1軍外野挑戦の「根拠」と「裏付け」
「今できないなら、もう今後できない」栗原捕手挑戦の真意
斉藤和巳2軍監督が「良い捕手になった」と語る驚きの理由
――球団としては遊撃手として育ってほしい思いもあったはず。イヒネ選手はなぜ外野に挑戦することになった?
「イヒネが今年明確に勝負できるポジションはそこだということですね。でもそれは、もちろん現場だけで決めたわけじゃなくて、彼が外野で出ることによって、ショートとしての成長曲線が下がるなら『ノー』と言いますけどね。外野で1軍に登録されながら、ショートとしてのスキルアップはできるという判断のもと、コーディネーターと相談しました。彼のショートは、もちろん全然捨てていないです。彼が一番“次の可能性”がある選手だと思っての、ドラフト1位ですから」
「それと、1軍で外野をやることが、将来的にショートとしてマイナスになるなら、やらせないんですけど。マイナスの要素が1個も出てこなかったんです。例えばショートとしての動きが悪くなるとか、ショートとしてデビューする時期が遅くなるとか、そういうのがあるのであれば別ですけど。昨年でいえば庄子が1軍にずっといて、試合になかなか出られない時期はありましたけど、守備指標は上がっているんですよ」
「それは練習を積んだからです。彼は1軍にいて練習しながら、親子ゲームをしながら上達してきた。昔はゲームに出ないと上手くならない、というのがあったんですけど、今はそうではない。その実績があったから、コーチやコーディネーターの指導のもと、イヒネのショートとしてのスキルは下がらないという判断をしました。きっちり我々で相談したうえで、監督に返事をしました。もちろん昔みたいに監督と僕だけで全部決められるわけじゃないので。ちゃんと議論をして、僕らはそう判断したんです」
――城島CBOをはじめ、コーディネーターらを含めた話し合いが多くあった。
「アナリストというスペシャリストがいるじゃないですか。例えば、この選手を1軍に入れたら、どれぐらいのレベルのショートだというのも(数字で)出てくるんですよ。この打球をアウトにできる確率とか、そういうものが出てくるわけです。それも含めて、彼(イヒネ)にとって今年1年は、1軍への挑戦です。彼はレギュラーも、ポジションも確約はされていないんで」
ドラフト1位で入団…イヒネ・イツアは「トッププロスペクト」
――小久保監督の口調を聞くと、イヒネ選手をドラフト1位で獲得したことを重く捉えていた印象があった。そういう意味でも、現場と球団の間で建設的な話し合いがあった?
「みんなもちろんそうなんですけど、彼の場合はトッププロスペクトなので。我々の世界には、トッププロスペクトと、そうじゃないっていうのは明確にありますからね。支配下の選手であっても、育成選手だとしても。育成で入団した選手がトッププレイヤーになっていく例が、うちにはたくさんあるわけで。彼らは一芸に秀でた何かが明確にある。残念ながらプロ野球は平等じゃないんですよ。平等じゃないんですけど、チャンスは誰にでもある。彼の外野(挑戦)に関しては、そういう形で至りました」
――イヒネ選手は外野手として今、どんどん上達しているように見える。球団には、この成長曲線というのは見えていた?
「彼は元々、(アマチュア時代は)外野手ですからね。プロに入るために、内野に入ってきた側の選手なので、外野の感覚はあるんです。でも彼が守備固めというミスができない状況で出ていくとするじゃないですか。今まで実績がなかったところ(内野)で出て行った時、安心感を得るのは、ね。そこはやっぱり彼が結果を出さないと、ベンチもそういう目では見られないでしょう。彼は外野でも、守備固めや代走だけではなくて、レギュラーになる力を十分持っていると思うので」
「今までも内野から外野に行って成功したプロ野球選手はたくさんいますから。さっきも話しましたけど、彼が外野に行くことが、彼のプロ野球のキャリアとしてマイナスにはならないと僕は思います」
「栗原もそうですよ。サードというポジションをするにあたって、支障が出るならキャッチャーはさせませんけど、全然オプションとしてあってもいいと思う。彼がもう1つ、2つ上の選手になるにはね。打てるキャッチャーって、日本では非常に大事。打つ方もまだ“答え”が出ていない状況で、キャッチャーをするわけじゃない。打つ方ではある程度の結果を残して、打席における形はすでにありますからね」
「キャッチャーの経験の浅さはあるかもしれないけど、投手陣だって、打ってもらった方がありがたいわけですから。じゃあ(コーチ陣も)栗原を教えようかってなるじゃないですか。そういうのも含めて、タイミング的には今がいいんじゃないか。今できないなら、もう今後はできないです。キャッチャーというポジションは難しいんですよ」
小笠原道大や和田一浩…城島CBOが考える“逆の例”
――一筋縄ではいかないポジション。
「歴代でもキャッチャーをしてきた人がサードやファースト、外野に行ってレギュラーを獲ったじゃないですか。そのことは不思議じゃないから、逆があるのも当然のことでしょう。栗原はキャッチャーで入ってきてサードに行って、ゴールデングラブ賞まで獲ったんですよ? キャッチャーに戻ってそれができたら、もっと活躍するでしょう。元々、キャッチャーができると思って獲っているわけだから。僕は期待しています」
――小笠原道大氏や和田一浩氏はキャッチャーとしてプロ入りし、その後に野手として活躍した。一方で栗原選手はもう一度キャッチャーに戻るという考えがあってもいい。
「不安視するのは皆さん(メディア)の仕事なんだろうけど、根本的な能力があるから獲っているんです。とにかく、いろんな可能性を探すということです。うちのオプションの中では、例えばセンターで入ってきたからセンターで育てなきゃいけない。全然そんなことはないです。特にピッチャーをやってきた選手なんかは、プロにまでくるんだから他のポジションをやったことがないわけですよ。野球を始めてから小中高って。だから他のポジションの可能性なんか想像できないです。でもね、逆に言うと僕ら(野手)もピッチャーはできないわけですよ」
「『ピッチャーから外れたやつが、他のポジションを守っている』。これは根本(陸夫)さんの格言です。斉藤和巳(2軍監督)なんて、多分いいキャッチャーになっただろうし、いいショートにもなったと思う。僕らは選手をいろんな角度で見ている。主要ポジションを探すよりは、うちの自前で一番いい選手を作った方がいいと僕らは思っていますから。そういう観点でイヒネを見守っていてください」
(竹村岳 / Gaku Takemura)