迷いを断ち切った「恵大っぽくない」
「全然落ち込んでいないです。大丈夫です」
その言葉に強がりは混じっていない――。7日にSGLスタジアムで行われた春季教育リーグの阪神戦。この日から2軍に合流した山本恵大外野手は「4番・右翼」で先発出場した。6日に行われた1軍のオープン戦後、小久保裕紀監督は山本の降格を名言。オープン戦では無安打と、打撃不振に苦しむ背番号77が“原点”を取り戻すための時間を2軍で過ごすことになる。
春季キャンプ中の実戦練習やオープン戦から、もどかしさを抱いていた。変化球に泳がされての凡打や、本来なら見送れるはずのボール球に反応してしまっていた。狂った歯車を、誰よりも感じていたのは山本自身だ。「今も必死だし、去年も必死なんですけど……」。昨年はキャンプを筑後で“完走”し、その後に支配下登録を勝ち取った26歳。首脳陣が降格を告げた際の反応に、山本の心が表れていた――。
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長打狙いで招いた“皮肉な副作用”の中身とは?
首脳陣が期待する「本来の打撃」
支配下獲得時と今…「必死の中身」の違い
「自分のバッティングができていない、というところですね。結果論じゃなくて内容というか、自分のスイングができていない。あんなにボール球を振る選手じゃないので。そこを2軍で調整して、自分の良いところを思い出してやる、というところですね」
村松有人野手チーフコーチは、首脳陣を総意をこう代弁する。そのうえで「『引っ張り、引っ張り』というか、インコースを意識しすぎているところがある。もっとセンターに強い打球を打つという自分のバッティングを思い出してほしいと思います」と、期待を込める。「『修正してきます』ということで、前向きな感じでした」。山本の力強い返事に、村松コーチも安堵の表情を見せた。
向上心が招いた皮肉な“副作用”
なぜ、本来の姿を見失ってしまったのか。山本の口から語られたのは、向上心が招いた皮肉な“副作用”だった。「右方向に大きいのを打ちたいという思いで、シーズンオフからやっていたので。それでちょっとポイントが前になっているのかなと」。長打を欲するあまり、体の開きが早くなる。その結果、「逆方向を意識しても変化球に泳がされてセカンドゴロばっかり」という悪循環に陥ってしまっていた。
その迷いを断ち切ったものこそ、指揮官の一言だった。「恵大っぽくない。本来の姿じゃないぞ」。小久保監督からの指摘は胸に刺さった。「2月からずっと同じやられ方をしてるというか。結果も出なかったので、それは当たり前だと思っています」。2軍行きを告げられた瞬間に、やるべきことが明確になった。「もう1回、心を入れ替えてやります」。真っすぐな目で語る山本の言葉に迷いはない。
1年前の同時期はまだ3桁の背番号を背負っていた。支配下登録を勝ち取るための飢えと、今の心境はどう違うのか。「今も必死だし、去年も必死だったんですけど……。去年はなんとしてでも支配下になる、という思いで。今は1軍に入るという思い。必死なのは一緒ですけど、必死の内容が違うというか」。より高くなった目標。支配下を掴んだ経験があるからこそ、前向きな姿勢は失うことはない。
「逆方向に打てるのが自分の長所なので。課題も明確になっていますし、その原点に戻ってやるだけです。もう1回作り直して、1軍の戦力になれるように頑張ります」。昨シーズン中も2度の抹消を味わった。その経験も、今となっては支えになる。本来の姿を取り戻し、1軍の舞台で快音を響かせる。
(飯田航平 / Kohei Iida)