コロンビア生まれ、米育ちも、父の故郷がニカラグア
最高の舞台で、“ナイスガイ”たちと笑顔で再会を果たすため――。「奇跡」を起こそうと懸命にプレーするのは、2026ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でニカラグア代表の一員として参加しているジーター・ダウンズ内野手だ。
米フロリダ州マイアミのローンデポパークでは5日(日本時間6日)、1次ラウンドのプールDが公式練習と記念撮影、記者会見を行った。5チームの先頭を切ってグラウンドに姿を現したニカラグア代表の一団にはダウンズの姿があった。
まだ球場スタッフの姿もまばらで、音楽も流れていない静寂の中、ローンデポパークの外野エリアでニカラグア代表がウォームアップを始めた。練習開始予定は9時だが、時計はまだ8時50分。初戦のドミニカ共和国戦に向け、はやる気持ちが抑えきれなかったのかもしれない。
ダウンズは、ニカラグア国内リーグでプレーするブランドン・レイトン内野手らと二塁のポジションでノックを受けると、メッツで活躍するマーク・ビエントス内野手と同組でフリー打撃を実施。終始リラックスした様子で、ルーツを同じくする仲間との時間を楽しんでいるようだった。
ダウンズ自身はコロンビア生まれで、5歳の時に家族でマイアミに移り住んだ。ニカラグア出身で元野球選手の父が付けてくれたジーターという名前に導かれるように内野手となり、2017年MLBドラフト全体32位でレッズ入り。マイナーとメジャーを行き来する日々を送ったが、2024年に縁あってホークスに入った。
自分が日本でプレーすることは「まさか」の展開だったが、今ではその選択は正しかったと感じている。「選手層の厚いソフトバンクでは学ぶことが多いし、チームメートはみんないいヤツばかり。日本に移籍したことで成長できたと思うし、昨オフも日本に戻るという選択肢しか考えていなかった」。そう明かしたダウンズに再び「まさか」が訪れた。WBCニカラグア代表に選ばれたのだ。
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名将ベイカー監督が鷹戦士を選んだ“意外なワケ”
日本戦が実現したら鷹戦士が「笑いが止まらない」理由
鷹戦士が挑む「奇跡」の目標と、初戦で見せた確かな存在感
ナショナルズ傘下で意気投合…大切な仲間の父はダスティ・ベイカー
今大会でニカラグアを率いるのは、メジャー通算2169勝を誇る名将、ダスティ・ベイカー監督。実はダウンズが2023年に所属したナショナルズ傘下マイナーで意気投合したのが、ベイカー監督の息子ダスティンだった。
「少しでもメジャー経験を持つ選手を探していたところ、息子に『ダウンズがいい選手だ』って勧められたんだ。マイナーではしっかり結果を残しているものの、チームの都合でなかなかメジャー昇格のチャンスがもらえなかっただけ。『一度見てほしい』って」とベイカー監督。映像を見てみると、なるほど息子が言う通りのプレーぶり。貴重な戦力の1人として代表に選出した。
ダウンズは千載一遇のチャンスに感謝した。「名将の下、幼少期を過ごしたマイアミで、父の生まれた国を代表してプレーできるなんて。こんな光栄なことはない。今回のチームは、ニカラグアの国内リーグに所属する選手がほとんど。彼らと一緒にプレーできることもまた、自分にはかけがえのない経験になる」
プールDには、大会史上最強チームの呼び声高いドミニカ共和国、巧打者が揃うベネズエラ、オランダ、イスラエルと強豪がズラリ。最低でも2勝を挙げることが準々決勝へ進出するためのカギとなるが、ニカラグアにとってはいずれのチームも容易な相手ではない。
ただ、1次ラウンドを突破した先には、さらなる「まさか」が実現する可能性が待っている。プールDの上位2チームが準々決勝で対戦するのは、プールCの上位2チーム。つまり、ニカラグアvs日本というカードが実現するかもしれないのだ。
ダウンズは「あくまで夢のまた夢」と前置きを忘れないが、「日本にはソフトバンクの仲間が数人いる。準々決勝で顔を合わせることになったら、笑いが止まらないかもしれないな」と想像するだけでも楽しそうだ。「実現させるためにも、まずは1次ラウンドで2勝を挙げることに全力を尽くしたい」と闘志を燃やした。
日本時間7日に行われたドミニカ共和国との初戦は3-12で敗れたが、5回を終えるまで同点で食らいつくなど健闘ぶりを見せた。ダウンズ自身も9回に代打で出場し、左前打を放つなど、確かな存在感を示した。可能性がゼロではない限り、「夢のまた夢」は現実になり得る。ニカラグアが台風の目となり、プールDをかき回すことに期待したい。