高橋隆慶が見せたもう1つの“好プレー” よぎった2年前の記憶…「知っていたんです」

サヨナラ本塁打を放つ高橋隆慶【写真提供:産経新聞社】
サヨナラ本塁打を放つ高橋隆慶【写真提供:産経新聞社】

高橋が放った挨拶代わりの一撃

 今季の本拠地初試合となった3日のヤクルト戦。主役はドラフト5位ルーキーの高橋隆慶内野手だった。1点ビハインドの9回に描いた放物線は、左翼テラスに飛び込むサヨナラ2ラン。オープン戦とはいえ、ド派手なデビュー戦を飾った。

「いやー、ビックリしましたよ」。試合後、小久保裕紀監督が思わず笑みをこぼすほどのインパクト。だが、指揮官はこう続けた。「(8回の三塁守備は)いいバントだったので、素手でいってあれをアウトにしたのがね。どちらかというと、そっち(守り)に課題はあるので」。8回の守備から試合に出場した高橋は、無死一塁で三塁前に転がった犠打を素手でキャッチし、打者走者を一塁でアウトにした。

 華々しいデビューに注目は集まるが、このワンプレーにこそルーキー・高橋の冷静さが垣間見えた。好守を呼び込んだのは、24歳が思い起こした“ある記憶”だった――。

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続きの内容は

蘇った2年前のウインターリーグでの「記憶」
なぜ初球をフルスイング?高橋が語る「自分らしさ」
歓喜の輪から立ち返った「やはりオープン戦」の真意

「打者のモンテルとは2年前のウインターリーグで試合をしていて、めちゃくちゃ足が速いことを知っていたんです。打球も死んでいたし、グローブで(捕球に)いったら間に合わないと思って。『素手でいかないと』というのがありました」

 一歩間違えればミスとなり、ピンチを拡大させかねないプレーではあったが、高橋に迷いはなかった。明かしたのは、JR東日本時代に社会人選抜として台湾で戦った記憶。当時、対戦相手として強烈に印象に残っていたモンテルの俊足。その記憶にあったからこそ、咄嗟の判断ができたと振り返る。

 その冷静さは8回の本拠地初打席でも表れていた。マウンドにはヤクルトの奥川。高橋は初球の直球を迷わずフルスイングした。「自分はバッティングが売りの選手ですし、変化球を上手く打って単打を求められている選手でもないので」。結果は空振り三振ではあったが、そう語る言葉からは、自分に求められる役割への理解が伺える。

立ち返る冷静な気持ち「オープン戦だな」

 劇的な一発を放ち、チームメイトからの祝福を受けた後のロッカーで、高橋はふと冷静な気持ちになったという。「公式戦ではないので。盛り上がり方とかも、自分が想像していたものよりはなくて、『やっぱりオープン戦だな』という思いになりました。これを公式戦で、自分がサヨナラを打って歓喜の輪の中心に……。そういう思いはあります」。結果を残しても、それはあくまでもオープン戦。次は公式戦で実現したいと、あらためて感じさせる瞬間でもあった。

「ペナントを1軍で過ごしたいっていう思いが、すごくあります」。静かに力を込めて語るルーキー。記憶に残るデビュー戦の裏で、蘇った記憶。高橋隆慶という男が、これからどのようなシーズンを過ごし、どのような活躍を見せてくれるのか。大きな期待を抱かせてくれる24歳。序章としては、あまりに十分すぎる一夜だった――。

(飯田航平 / Kohei Iida)