プロ14度目の春季キャンプ「ある程度良くなってきた」
肩の荷を1度、全て下ろしてみたからこそ、表情には充実感が現れた。3年間で“強すぎる責任感”が自分を追い込んでいた。「今はもう何も考えていないです。純粋に自分の球がよければいいし、悪ければ練習するだけなので」。晴れ晴れとした顔つきで語るのは、東浜巨投手だ。
昨年11月9日に国内FA権を行使し、68日間の葛藤の末にホークス残留を決断した。S組として春季キャンプを過ごした2月。ここまでの調整については「ある程度は良くなってきています。納得できるようなボールを試合の中で増やしていけたら、自分の中でも安心材料になると思うので」と胸を張る。2月23日に行われた侍ジャパンとの強化試合では2回無失点。今春初のオープン戦となった1日の西武戦では3回7失点と苦しんだが、開幕ローテーション入りに向けてただ前を見つめている。
人生最大の決断を経て迎えた14度目の春季キャンプ。マウンド上では「態度に出さない」ことを貫いてきた背番号16だが、ブルペン投球では1球1球に表情を変えていた。「今のはいいね」「もうちょっと、こうか」。納得がいかない瞬間もあるが、その顔つきは心から野球を楽しんでいるように見える。右腕の中で生まれた大きな“変化”――。その理由は3年間の重圧から解放されたからだ。
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続きの内容は
「自分を追い込みすぎていた」と語った真意とは?
期待や感謝…東浜巨が3年間で“背負っていたもの”
笑顔を取り戻した理由…その具体的なきっかけは?
2022年オフに3年契約「もっといっぱい投げたかった」
「難しいところはありましたよね。自分で追い込みすぎたりとか、深く考えすぎたりしていたので。だいぶプレッシャーをかけていたのはあったと思います。それが違った方向に出てしまうこともあったのかもしれないし、自分の反省するところでもあるんですけど。もう終わったことなので、今はもう何も考えていないです」
2022年オフに3年契約を結んだ。立場に甘んじることなく、“初年度”の2023年から「1年1年が勝負」と言い聞かせてきたが、残ったのは3年間で13勝という数字だった。「もっといっぱい投げて、チームの中心にいることを目標にしていた。その分、『この3年間は力んでいたな』とも思うし、自分自身を追い込みすぎていましたね」。複数年契約を提示した球団への感謝、期待してくれるファンの存在……。その全てに応えなければならないと思っていたのは、右腕の“強すぎる責任感”がゆえだ。背負っていたものは、いつしか大きな重圧へと変わっていた。
「なかなか貢献できなかったのは、もちろんすごく悔しいです。ただそれも踏まえて、そういう経験をしたことは無駄じゃないと自分では思っています。じゃあ大事なのは、これからどうするのか。そこに今は目線がいっているので。割り切って今を楽しんでいる自分もいますし、ここからどれだけ伸ばしていけるかだと思います」
「野球を楽しむ」。そんな純粋な気持ちを思い出したきっかけは、やはりFA宣言だと右腕は言う。「いろんなものを見て、感じることができた期間だったので。ベースとしては変わらないんですけど、自分の中の思いやモノの見え方がどんどん変わるようになったというのはありますね」。ホークスが“必要”だと言ってくれたことが、心から嬉しかった。覚悟の単年契約。肩の荷を下ろしたことで、自然と表情に明るさが戻ってきた。
今後のキャリアも「あと5年、10年とやるかもしれない」
近年ではチェンジアップの習得やクイックフォームを取り入れるなど、積極的に新たな技術を試してきた。今年の6月には36歳を迎えるが、さらに高みを目指して日々を過ごしている。「細かいところまでやろうとしたらキリがないくらい。『これがしたい、あれもしたい』というのが出てくるし、面白いなと思いながらできていますよ」。今を全力で生きていれば、きっと“その先”が見えてくるはず。2026年の東浜から、目を離してはいけない。
「いつ終わるかもわからないですし、それが今年かもしれない。あと5年、10年とやるかもしれないじゃないですか。先のことは考えても仕方ないですし、今の自分がどういう練習をしていけばいいのか、結果を出していけばいいのか。本当にそれだけなので。後ろ向きな気持ちが全くない分、すっきりしているんだと思いますよ」
自分自身のためだけに腕を振る。純粋さを取り戻した東浜巨は、マウンドでどんな表情を見せるのか――。
(竹村岳 / Gaku Takemura)