中日との強化試合では1イニングを無失点の好投
野球日本代表「侍ジャパン」の救世主として、日に日に期待が高まりつつある。ホークスの投手陣から唯一選出されている松本裕樹投手だ。WBCを前にリリーフ陣の怪我人が続出している状況下で、順調に調整を続ける29歳。勝ちパターンの一角に入ってくる存在として注目されている。
先月以降、侍ジャパンでは平良海馬投手(西武)、石井大智投手(阪神)、松井裕樹投手(パドレス)と強力なリリーバーが故障のため相次いで出場を辞退した。2月27日の中日との強化試合では9回に登板した大勢投手(巨人)が右足をつって緊急降板するアクシデントに見舞われた。そんな中で松本裕は同日の試合で7回の1イニングを投げて1安打無失点。最速151キロをマークし、「2試合目の対外試合としては、今までで一番仕上がりが早いんじゃないかと思います」と振り返った。
ホークスの「勝利の方程式」の一角として、3年連続で50試合以上に登板してきた松本裕は、侍ジャパンの救援陣にとって頼もしい存在だ。井端弘和監督やアドバイザーとして宮崎合宿に参加していたダルビッシュ有投手(パドレス)も高い評価を与えていた。指揮官と、メジャー通算115勝を誇る右腕は松本のどこに国際舞台での強みを見出すのか。その証言から探った。
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続きの内容は
井端監督が唸った松本のフォームの秘密
ダルビッシュが語るデータの得意例
松本裕樹が明かす「好調」の理由
井端監督は松本の特徴について、こう語っている。
「僕の中で、一番タイミングが取りづらいピッチャーかなと。彼の凄さは、投げれば投げるほど球速がどんどん上がってくる。他のピッチャーだと、投げる前にグッと溜めるタイミングがあるんですけど、彼の場合は一連の動作でスーッと流れてくるので。なんかトップが決まらないなと思って見ていました」
沈み込むように、低い体勢のまま並進していく松本の独特のフォーム。巧打者として鳴らした指揮官でも“タイミングが取りづらい”と感じるという。
百戦錬磨のダルビッシュが語る「特異性」
また、ダルビッシュ有は別の角度から“特異性”を分析する。「松本くんは(弾道計測器の)トラックマンのデータを見ても、メジャーにもあまりいないような、凄くユニークなタイプの投手だと思います。低いリリースポイントからホップ成分の高い真っすぐを投げ、それに加えてフォークで落ち幅もつくれますから」。
メジャーリーガーにとって、あまり見たことがないような軌道を描くという松本のボール。初見であれば、なおさら対応は困難になる。メンバーをMLB球団に所属する選手で固める米国、ドミニカ共和国、ベネズエラといった強豪国にも十分に通用する投手だと見ていた。
井端監督やダルビッシュによる高評価を、松本自身は「リップサービスかなと思っています」と受け流す。ただ、ここまでの状態については「前回よりスピードが出ていた。順調に上がってきています」と手応えを口にする。ピッチクロックにも「慌てず時間を使って投げることができました。いいアピールにはなったのかなと思います」と適応できている様子だ。
「体の状態と出力を上げて、大会までには合わせていきたいと思います。いるメンバーでやるしかない状況で、しっかり戦えているのかなと思います。1人1人みんなが重要な役割を担っていると思いますし、きょうはその中の1人として仕事ができたかなと思います」と語った松本裕。託される役割はどこになるのか。侍ジャパンにとって、重要度が増しているピースであることは間違いない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)