斉藤和巳監督はなぜ最後まで練習を見守るのか 「これが俺の生き方」…愛情と情熱の“原点”

斉藤和巳2軍監督【写真:竹村岳】
斉藤和巳2軍監督【写真:竹村岳】

タマスタ筑後で大越基3軍監督から預かった“伝言”

「寿命は縮んでいるかもしれないけど、これが俺の生き方やから」。太陽も沈んだ午後6時すぎ、若鷹の練習を見終わった斉藤和巳2軍監督はそう言って笑った。指導者として迎えた4年目のキャリア。現役時代には2度の沢村賞を獲得するなど、数々の栄冠を手にしてきた男が語った“生き様”とは――。

 開幕を目指し、選手がそれぞれ鍛錬を積んでいる今春キャンプ。タマスタ筑後で大越基3軍監督から“伝言”を預かった。「ちょっと聞いてみてくれないかな?」。どれだけ遅い時間になろうと、斉藤監督は最後の選手1人が練習を終えるまで、絶対に隣で見守り続ける。そんな姿を、大越監督もよく知っていた。「あれは簡単にはできないことだし、愛情だとか責任感だとか、そういうのも超越していると俺は思う。だからこそ和巳監督には、自分が叶えたい明確な目標があると思うんだよね」。

 チームや選手に関する情報交換はするものの、指揮官同士はあくまでも一線を引いた関係性だ。斉藤監督を突き動かすものは、何なのか――。大越監督の純粋な疑問を本人にぶつけてみた。

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若鷹と歩む道…指揮官を突き動かすモチベーション
“負けないエース”の下積み時代…名前を挙げた3人の“恩師”
斉藤和巳が眠れない夜、若鷹の可能性を「諦めたくない」

「俺はただ頑張っている人が好きなだけやから」

「そう言われてみると、俺発信のモチベーションではないかもしれない。選手はもちろんなんだけど、俺はただ頑張っている人が好きなだけやから。練習を見ながら何かを手伝うわけではないんやけど、一生懸命にやっているところは最後まで見ていたいし、やり遂げた選手がこれからどんな人生を歩むのか。それに対して、俺にできることがないか。そういうことをいつも思っているよ」

 目標に向かって突っ走る選手たちの背中を、少しでも押してあげたい。単純明快にして、最大の“動機”を口にした。「途中で帰るとか、ほぼないから。育成のやつらからしたら、俺がいることを当たり前に感じているかも」と苦笑いするが、最後の最後まで指揮官に見られていることは選手のモチベーションにもなるはず。今の状況は、斉藤監督にとっても学ぶことばかりだという。

「いろいろと理解したいというのもあるかな。『人ってこうやって成長するんやな』『成長するのに今も昔も変わらんな』って。見ていると感じることも多くて、俺も勉強になるからさ」。4軍、3軍の監督を経て、今季は2軍を任されるようになった。若鷹の歩みを見守っていたい――。“親心”のような気持ちもまた、指揮官を強く突き動かしている。「綺麗に言うたらそうなのかもしれないけどね」。照れながら明かしたのが、自分だけの「生き様」だった。

「プライベートで一緒にいる人とも、やっぱり俺は笑っていたいのよ。コーチとか、スタッフもそう。ふざけるのとはまた違うよ。真剣にやるから喜べるというか、笑顔でいるのが一番幸せやんか。俺の中では『最後に笑ったものが勝ち』。しんどいかもしれないし、寿命が縮んでいるかもしれないけど、これが俺の生き方やから」

夕方まで鈴木貴大(中央)の練習に付き合っていた斉藤和巳監督(右)【写真:竹村岳】
夕方まで鈴木貴大(中央)の練習に付き合っていた斉藤和巳監督(右)【写真:竹村岳】

プロ8年目に初の2桁勝利…下積み時代に出会った“3人の恩師”

 1995年のドラフトで1位指名を受け、ホークスに入団した。初めて2桁勝利を挙げたのは8年目の2003年。下積み時代は長かったが、苦しかった期間で自分を変える“恩師”と出会った。「小久保(裕紀)監督、城島(健司)CBO、あとは日本ハムにいる林(孝哉)さん。切っても切れないし、この人たちがいなかったら今の自分はいないから。その他にも反面教師にした人もいるし、この人との出会い、その時の一言……。今につながっているものはたくさんあるよ」。

 2002年までは7年間でわずか9勝。クビになるかもしれない“崖っぷち”から変貌を遂げられたのも、恩師の存在に救われたからだ。今度は自分が選手たちに与えていく番だ。「もちろんイラッとすることもあるよ。でもそれが選手のことなら、その日の夜まで考えちゃうし、パッと目が覚めることもある。やっぱり諦めたくないんよね」。深い愛情に背中を押された若鷹が、きっと1軍の舞台へと羽ばたいてくれるはずだ。

「選手に話もするけど、成長スピードを上げるには絶対に本人の意思が大事。こっちからもいろいろと促したり、俺なりに距離感を考えたりもする。『何か気づけよ、感じるんやぞ』って、その繰り返し。4軍、3軍で育成選手の成長過程も見てきているし、経験してきたことを俺は絶対にプラスに変えていきたいから」

 誰よりも兄貴肌で、愛情と情熱を胸に若鷹の成長を祈っている。それが、斉藤和巳という男だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)