昨年11月…倉野コーチが杉山に伝えた“起用法”に関する考え
ホークス4年目にして、“初めて”競争に飛び込んでいく。20歳のころから守ってきた守護神の座。あらためて、明確な思いを口にした。「特別な場所だから」――。ロベルト・オスナ投手が13日、空路で福岡入りした。15日からは宮崎・生目の杜運動公園で行われている春季キャンプに合流する。
2025年は26試合に登板して3勝1敗8セーブ、防御率4.15という成績に終わった。精彩を欠き、6月に登録抹消されると、杉山一樹投手にクローザーの座を明け渡した。右肩の痛みにも悩まされ、シーズン終盤に1軍復帰を果たしたもののポストシーズンでは登板なし。11月1日に帰国していた。米国での自主トレではすでにブルペン投球を開始しており、コンディションを万全に近づけて日本にやってきた。
オスナはこれまで守護神の座を“確約”された状態で調整に励み、独自のリズムで開幕を目指してきた。チーム内に現れた強力なライバルの存在に、何を思うのか――。首脳陣の方針を理解した上で口にした言葉。それは右腕にとって“人生そのもの”だった。
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続きの内容は
オスナが「守護神の座」を譲れない真の理由
トレードマークを断髪…「何かを変えよう」と決めた真相
来日直前…家族と離れる瞬間に見せた「意外な素顔」
「問題がなければ自分がクローザーをするつもり」
「倉野さんと話はまだしていないですけど。まずは健康で、問題がなければ自分がクローザーをするつもりで来ています。ただ、話をするまではまだわからないので」
昨年11月24日に行われたファンフェスティバル。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、杉山にこう伝えた。「9回を投げたいなら、オスナと競争してもらうから」。1つしかないポジション。結果を残して奪い合うしかない。背番号40はオスナに敬意を払いつつ「去年はあくまでも“代役”という形だった。今年は開幕から、僕が取りたいなという気持ちです」と明確な意欲を語った。
オスナは日米通算223セーブ。ブルージェイズ時代の2015年から20歳の若さでクローザーを任されると、以降も圧倒的な成績を残し、自分だけの地位を築き上げてきた。「僕にとっても特別なポジションなんです。スポーツではありますけど、人生を変えて、大きな影響を与えてくれた。クローザーをやってきたからこそここまで来られたし、いろんなことを勉強できたんです」。勝敗を一身に背負い、プロ野球選手として生きてきた。9回にしかないあの緊張感を、誰にも譲りたくはない。
「抑えた時はいいんですけど、悪かったら何を言われるかわからない。それくらい大きなものを背負って、抑えはマウンドに立っています。例えば、柳田(悠岐)選手はチームの顔。彼が凡退すれば負けてしまうし、上手くいけばチームが勝つ確率はグッと上がる。自分としてもそれくらいハッキリしている方がやりがいを感じるし、だからこそ『やりたい』と思えるポジションです」
充実したオフシーズン…感謝した家族の支え
オフシーズン、テーマに掲げてきたのはトレーニングとリカバリーだ。「去年帰国した時も肩に違和感があったので、まずはそれを治すところから自主トレをスタートしました」。長髪がトレードマークだったが、襟足もバッサリと刈り上げた。「去年までの2年間はよくなかったので。何かを変えようと思って髪を切ってきました。1年間怪我なく投げられるように準備してきたし、違った姿を見せられるように」。
福岡空港に降り立った右腕の表情は決意に満ち、晴れ晴れとしていた。「今回のオフシーズンはすごくよかったんです」。充実していた理由は、ただ1つ。家族と多くの時間をともに過ごせたからだ。
「妻や子どもはもちろん、両親や兄弟、3か月のほとんどを家族と過ごしていました。去年や一昨年までとは、比べられないほど一緒にいられたので。文化の違いもあると思うけど、僕たちにとっては家族と過ごす時間はすごく特別なこと。モチベーションにもなるし、幸せな気持ちにもなる。あらためて『頑張りたい』と思えたし、いい時間を過ごせたんじゃないかなと思います」
異国の地で戦う外国人選手にとって、周囲のサポートは必要不可欠だ。2月に母国を離れ、半年以上に渡る戦いに身を投じる。家族と別れる時には寂しさに襲われる。「センチメンタルになるところがあるんですよね。『行ってくる』って言うと悲しくなっちゃうので、逆に普段通りを意識して」。3月には妻と愛息も来日する予定。感謝の気持ちを胸に、ホークス4年目のシーズンが始まる。
「一番大事なのは、怪我をせずに健康で過ごすこと。1日1日、できることをやるのが大切だと思います」。競争を勝ち抜いて、9回のマウンドに立つ。右腕を突き動かすのは家族の存在、そして守護神として歩んできた唯一無二のプライドだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)