染み付けてきた確かな技術
プロ3年目で初めての宮崎キャンプ。室内練習場でミットの音を響かせていたのはB組に入った藤田悠太郎捕手だ。全体練習後、打撃マシンから繰り出されるボールをひたすら捕り続ける姿があった。動かないミット、吸い込まれるようなキャッチングは確かな成長を感じさせた。
春季キャンプ第2クール、B組では実戦形式の練習が始まったが、藤田の変化を周囲も感じ始めている。「キャッチングが良くなった」。そんな声が、本人に直接伝えられることも増えているという。今季から2軍バッテリーコーチに就任した高谷裕亮コーチもまた、藤田の変化を感じ取っていた。「今こうやって見ていても、チャンスは全然あると思うんで」。口にした期待とは――。
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続きの内容は
高谷コーチが藤田に託した「1軍への具体的なアピール」
侍ジャパン捕手から学んだ、藤田が「最も影響を受けた心のありよう」
藤田が語る、支配下への想いと「あたふたを卒業」した心境
高谷コーチが望む“アピール”
「自分が見ていても、しっかりピタッと止められるようにはなってきている。そういう部分は出始めているという印象はありますね。僕が言ったのは、『止めないかん』とか『ビシッといかないかん』と考えすぎて固まらないことだけ。とにかくそのタイミングです」。高谷コーチはこう語る。
藤田がこのオフに取り組んできたことを尊重しながらも、今後のさらなる上達を促すべく、意識と感覚を擦り合わせている最中だ。「僕は『まだ3年目』とかは思わず、自分でいけるチャンスがあるんだったらどんどんいくべきだと思っているので」。遠慮なんかする必要はない――。1軍の枠に食い込むためのアピールを期待している。
続けて「焦る必要はないですけど、とにかくそこを目指してほしい。ミスを怖がって小さくならずに、新しいことをやっているんだったらどんどんトライして。僕も何か手助けできればなと思っているんですけど。今こうやって見ていても、チャンスは全然あると思うので」と、20歳の若鷹へエールを送った。
侍ジャパンの捕手から学んだ“心と技”
そんな背番号65の成長を引き出した要因には、WBCにも選出された阪神・坂本誠志郎捕手と行った自主トレが大きく関わっている。3年目を迎える前に、技術と心構えを徹底的に叩き込まれてきた。
「(坂本の顔に)泥を塗れないですね」とはにかみながらも、その表情には充実感がにじむ。「いいこともたくさん学べたし、技術的なことも結構学んできました。坂本さんは感性が独特で、真似しようと思ってもなかなかできないところもありました」。言葉では“できない”と言いつつも、身体には確実にその教えが染み付いている。
最も影響を受けたのは“心のありよう”だった。「坂本さんは何をしていても焦らないんです」。技術以上にその姿から学ぶものが多くあった。高卒からの2年間、毎日を必死に過ごしてきた。昨年まで春季キャンプを筑後で過ごした20歳にとって、宮崎での春季キャンプに胸が高鳴らないわけがない。
それでも、「いつも以上に頑張ろうとか思わずに、やることをやれればいい。少しどっしりしよう、と。あたふたしていたら、すぐに1年が過ぎるので。それを大切にしてやっています」と落ち着いた口調で話す。かつて「僕だって支配下のキャッチャーです」と言葉で悔しさを示したこともあった藤田。3年目はこれまでのどのシーズンとも違う、充実の春を迎えている。
(飯田航平 / Kohei Iida)