「本当に素晴らしい施設。めちゃくちゃすごいです」
鷹フルは、全国各地で自主トレに励むホークスナインの様子をお届けします。今回登場したのは、「エイジェックスポーツ科学総合センター」で汗を流す松本裕樹投手です。なぜ、これまでつながりのなかった栃木で自主トレをすることになったのか? 右腕の中で生まれている“小さな変化”。「もうそういう立場なのかなと思いますね」。打ち明けた後輩たちへの思いとは――。
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意外な“縁”が、右腕を栃木へと導いてくれた。「みんなで一緒に作り上げて、練習している感じですよ」。チームメートの上茶谷大河投手、津森宥紀投手、岩井俊介投手に加えて、他球団からも西武・甲斐野央投手、巨人・泉圭輔投手、大分B-リングスの笠谷俊介投手が参加。7人の投手が集まった中、面々の先頭に立っているのが松本裕だ。
2025年は51試合に登板して5勝2敗、防御率1.07と圧倒的な存在感を示した右腕。開幕から日本一になるまで高いパフォーマンスを発揮し、ブルペンを支え続けた。「(シーズンを完走するのは)最低限の目標に掲げていたので。監督やコーチ、トレーナーとも相談しながら、しっかりと叶えられたのかなと思います」。前回日本一に輝いた2020年は25試合登板だった。「あの時とは登板数も、任されているポジションも違う。チームの中心となって掴んだ日本一という意味では、そこもよかったのかなと思います」と充実感を口にした。
「エイジェックスポーツ科学総合センター」は、さまざまな設備を兼ね揃えている。室内練習場はもちろん、ウエート器具、選手が治療を受けるための電子機器、直近では動作解析まで導入された。選手たちも「本当に素晴らしい施設。めちゃくちゃすごいです」と口を揃える。松本裕と栃木を結んだ意外な人物の存在とは――。
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続きの内容は
【続きを読むと分かる3つのこと】
・松本裕樹と栃木を繋いだ意外なキーパーソンの正体とは?
・「誰かとやるのは初めて」“チーム66”結成の舞台裏
・プロ12年目で芽生えた…データには見えない「些細な変化」の正体
高野圭佑さんとの“縁”「お願いすることになりました」
それはロッテ、阪神などで投手として活躍した高野圭佑さんだ。2020年に阪神を構想外になり、台湾球界に移籍。2022年に現役を終えると、現在は「エイジェックスポーツマネジメント」の「ベースボールコーディネーター」として自主トレのアテンドなどを行っている。プロに限らず、アマチュアにも視野を広げて球界に貢献しているところだ。
高野さんは、かつて松本裕が自主トレを行なっていた広島県出身。共通のトレーナーに師事していたこともあり、合同でトレーニングをしたことがあった。「去年の年始めくらいに、高野さんがここに就職されるというのは聞いていたので。自分が自主トレをするところを探していた中で『いい施設があるよ』という話を聞いて、お願いすることになりました」。上茶谷に声をかけると甲斐野、泉らも集結。「身近なメンバーですし、同級生ですから」と“チーム66”が結成された。
「(上茶谷とは)シーズン中から話していたんですけど、あいつらはもう自分たちでやっていたので。僕はこれまで(自主トレ期間中に)リハビリ組にいることが多かったし、誰かとやるのは初めてなくらいです。ブルペンキャッチャーやトレーナーは津森の知り合いが来てくれていますし、みんなで一緒にやっている感じです」
少しずつ年齢も上に…「逆に僕が若い子を見ている」
昨季は藤井皓哉投手、杉山一樹投手とともに勝利の方程式を形成した。1軍に昇格し、チャンスを得た岩崎峻典投手や川口冬弥投手らは、3人の徹底した取り組みに大きな“差”を実感していた。「試合中もずっとデータを見ているんです」。松本裕にとって2026年はプロ12年目のシーズン。「年齢的にも、もう上の方なので。もうそういう(引っ張っていく)立場なのかなと思いますね」と、右腕は静かに頷く。
周囲を見渡せば、後輩の方が多くなってきた。言葉で引っ張るというよりは、背中で示していくのが松本裕のスタイル。「見られ方とかは意識していないですね。まずは自分のやることに集中していますし、逆に僕の方が若い子の練習は見ているかもしれないです」。年齢やキャリアに違いがあっても先入観は抱かず、学ぼうとする姿勢は絶対に失わない。キャッチボールやストレッチなど、疑問を感じたポイントがあれば後輩であろうと積極的に質問を繰り返してきた。
全力で駆け抜けてきたプロ野球人生。周囲への意識が少しずつ生まれてきたのも、ブルペンで自分だけの“城”を築き上げた何よりの証だ。「長い間やってきたことがやっと表現できるようになってきて、その結果だと思いますね。他の人は『どんなふうにやっているんだろう?』、『どうすればもっと良くなれるかな』って。気になるようになってきました」。右腕の中で芽生えた些細な変化は、間違いなくリーダーシップと呼べるもの。ここに導かれた“縁”に感謝して、今季もレギュラーの1人としてホークスを引っ張っていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)