【連載・近藤健介】天才打者が語る“引退後” 「まだまだ足りない」…名将から感じた苦悩

近藤健介【写真:矢口亨】
近藤健介【写真:矢口亨】

現役最強打者が明かした“将来設計図”

 鷹フルがお送りする人気連載「~極談~」。2025年のラストとなる近藤健介外野手の最終回は“指導者への思い”がテーマです。来シーズンは33歳となる近藤選手。これまで仕えてきた4人の監督に見えたのは覚悟と苦悩でした。球界最強打者が見据える将来設計図とは――。

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 12月11日に行われた「TEAM AMAGIトークショー2025―福岡遠征―」。近藤が毎年行っている自主トレには、各球団から多くの選手が集まる。そのメンバーとともに満面の笑みでトークを披露した近藤は、控室での取材に穏やかな表情で応じた。「なんか楽しく、こういう仲間となにかができればいいんじゃないですか?」。それは、現役引退後のビジョンを聞いた際の答えだった。

 ホークスに移籍して3年目となった今季も、最高出塁率のタイトルを獲得した柳町達外野手や、栗原陵矢内野手にアドバイスを送る姿が目立った近藤。その姿には、指導者としての将来像も透けて見える。現時点で監督やコーチ業に対する思いはどのようなものなのか。近藤の答えは意外なものだった。

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続きの内容は

・近藤選手が語る、指導者への「意外な答え」とその真意
・4人の名将から近藤選手が感じ取った「指導者の覚悟」
・周東、柳町両選手が口にした「コンさんがいない」の意味とは

「現時点で野球の勉強がまだまだ足りないと思います。やっぱり小久保(裕紀)さん、新庄(剛志)さんもそうですし、栗山(英樹)さん、藤本(博史)さん……。僕が携わってきた4人の監督は色んな考えがありますけど、やっぱり野球の勉強されているなっていう感じがするので」

周東や柳町がそろって口にした「コンさんがいない」

 日本ハムに入団した2012年からは栗山監督と新庄監督、ホークスに加わった2023年からは藤本監督と小久保監督の下でプレーした。それぞれが標榜する「理想の野球」は違っても、根底に感じ取ったものは同じだった。

「もし(指導者を)やるんだったら、全てを捨ててまでは大げさかもしれないですけど、どの監督も苦しみながら覚悟をもってやられていた。どのチームでも、70人の支配下選手をまとめて、勝つためにやるというところは絶対にあるので。人それぞれにやり方はあると思いますけど、軽はずみに監督とかコーチをやりたいと言うのはなかなか難しいですね」

 現役として最後の時間を迎えるまで、全力で駆け抜ける姿勢は変わらない。今シーズン途中まで打撃タイトルを狙える位置にいた周東佑京内野手や柳町は、口をそろえて近藤健介外野手の名前を出していた。「コンさんがいない今年がラストチャンスなんです」。誰もが意識する特別な存在。そう捉えられていることに関し、近藤は寺笑いを浮かべながらも言葉を口にした。

「そう思われる立場になったことは嬉しいですね。やっぱりタイトルは1年間やってこその評価だと思うので。常に取りたいなと思いながらプレーはしますけど、その欲はファイターズの時より少ないかなと。ホークスに来てより勝利を求めるようになって、欲がなくなったことですんなり取れた。そういうものなのかなと思いますね」

 大型契約でホークスに迎えられたことへのプレッシャー、そしてなによりチームの勝利を第一に考えるようになったことで、その技術にはより磨きがかかった。近藤健介がバットを置く日まで――。そのプレーを楽しみ続けたい。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)