【連載・近藤健介】栗原陵矢は「すごい」 アドバイスを送る“境界線”「それがなければ…」

近藤健介【写真:栗木一考】
近藤健介【写真:栗木一考】

柳町達が語った感謝「迷っているときに…」

 鷹フルがお送りする人気連載「~極談~」。2025年のラストとなる近藤健介外野手の第3回は“アドバイスの流儀”がテーマです。栗原陵矢内野手や柳町達外野手をはじめ、多くのチームメートに助言を送ってきた近藤選手が語る“境界線”とは。選手の力を引き出す一言はどのようにして生まれるのでしょうか。

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 今季プロ初のタイトルを獲得した柳町は、飛躍の大きな要因として近藤の名前を挙げた。「的確というか、迷っている時に色々と教えてくれる。近藤さんに色々と聞いたお陰でバットの軌道も安定してきましたし、去年から飛距離がアップしたのも体の使い方を教えてもらえたところが一番大きかったと思います」。

 振り返れば、昨年5月の月間MVPを受賞した栗原も同じく近藤健介外野手への感謝を口にしていた。「試合前練習で打っていた時に、『クリ、分かったわ』って近藤さんに言われて。あのスイングだと真っすぐは打てないし、変化球も拾えないみたいな。本当にすごいっす」。細やかな動きの“異変”に気付く洞察力に、それを伝える言語力。近藤にアドバイスの「極意」を聞くと、意外な言葉が返ってきた。

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続きの内容は

・近藤健介が明かす「助言を送る」究極の境界線
・栗原陵矢が持つ「プロとしての矜持」の正体
・球界最強打者・近藤健介が毎年「変化」する理由

「アドバイスっていう感じじゃないですけどね。一緒に練習をしながら、気づいたところを話すみたいな……。僕の中では野球談義って感じですね」

大事なのは変える勇気「1軍でやるにはそれがないと」

 こともなげに語った近藤だが、誰かに助言を送るのは野球に限らず難しさが伴う。自分の一言で相手がより悪い方向に向かうことや、情報量の過多でパニックに陥ることもある。アドバイスを送るタイミング、そしてどのような言葉を選ぶのか――。近藤に判断の基準を尋ねると、返ってきたのは単純明快な答えだった。

「求められなかったら、別に何も言わないですよ。求められて初めて、その人のことを見ようと思うじゃないですか。それがなければアドバイスはできないので。より選手のことを深く見るっていう感じです」

 今シーズンの開幕直後に腰を手術し、約2か月のリハビリ期間を経て復帰した近藤。1軍に戻るやいなや栗原に助言を送った。「クリの打席はほとんど全て見ていたので」。普段から試合後の打撃練習を共にする後輩の姿を欠かさずチェックし、気になった点をすぐさま伝えた。それは栗原だからこそだ。

「あいつのすごいところは向上心ですよね。何事も恐れずに変えられる部分や、求めていく姿勢っていうのは、本当に高いところにあるので。何かを変えることは当然結果が伴って、良い悪いがあるんですけど。それに負けずにやれているっていうのは、あいつの強さの1つじゃないですかね」

 近藤の言葉は自身が歩んできた道にも通じる。打撃3部門のタイトルをすべて獲得し、球界最強打者と呼ばれても、毎年打撃に変化を加える。「1軍でずっとやり続けるには、それがないと。そこは変わらず、みんな持っていると思いますよ」。プロとしての矜持を栗原に見たからこそ、近藤は事あるごとに助言を送っている。

 近藤がホークスに加わって3年が経過した。自らのバットでチームを勝利に導くだけでなく、その言葉で後輩の力を引き出す役割も担うホークスの大黒柱。その存在はこれからも欠かせない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)