尾形崇斗に届いた「無理だろ」の声…受け止めた“批判” 秘めた先発転向の理由

尾形崇斗【写真:竹村岳】
尾形崇斗【写真:竹村岳】

尾形は来季から先発への転向を表明した

 否定的な声は自身のSNSにも届いた。「賛否両論でしたし、『無理だろ』とかいうコメントも結構みましたね」。来季の先発転向を表明した尾形崇斗投手に対する意見は、決して賛同的なものだけではなかった。

 2日にみずほPayPayドームで契約更改交渉に臨んだ右腕は、1300万円増の年俸2700万円(金額は推定)でサインした。今季は中継ぎで自己最多の38試合に登板し、1勝1敗5ホールド、防御率4.67。「(球団から)すごく期待していると言っていただいたので。自分的にもすごくいい契約ができたんじゃないかと思います」と納得の表情を見せた。

 この日、来季から先発に挑戦することを名言した。一方で、転向理由については「控えたいですね」と多くは語らなかった。もちろんチーム事情もある。ただそれだけでなく、理由を言わなかったのには尾形なりの“哲学”があった。

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続きの内容は

尾形崇斗が転向理由を「秘める」と決めた独自の哲学
「無理だろ」というSNSの批判への「意外な本心」
自己最多登板の裏で尾形が経験した「苦悩と葛藤」

「自分が『何かこうしたい』と言ったら、想像できてしまう。『こういうピッチングをしたいんだ』って。『こういう意図で先発転向します』と言ったら、そこで完結してしまいます。まだ何も成し遂げていないし、やる前に自分から何かを言うのは好きじゃないので」

 今季は春季キャンプ時点で中継ぎ陣の競争を「免除」され、リリーフの“不動の6人”として枠が与えられた。一方でシーズン中には波もあり、6月には2軍降格も経験した。最終的には防御率4.67と納得いく数字ではなかった中で、新たな挑戦。難しい決断なのは自らが一番知っている。

「先が見えないことに対して周りの人がワクワクを感じたり、楽しみだと思ったりすることがあると思う。それもシーズンの中の大事な過程の一つだと思っているので」。プロは楽しませることが使命でもある。ファンの想像を駆りたて、その想像を超えることがさらなる感動を呼ぶ。

 先発転向が報じられた際、SNSには様々な声が寄せられた。その中には尾形のインスタグラムに直接届くものもあった。「応援してくれる人もたくさんいましたけど、難しいというコメントは多かった」。ただ、それに対して一喜一憂することはなかった。

「見返してやろうとかはないですね。上を目指さないとそういう声は来ないし、同じように歩んでたら批判も賛同も来ない。だからそれでいいんじゃないかなと思いますけどね」

 チームは他にも上茶谷大河投手が先発再転向を目指し、他にも松本晴投手らが改めて先発への思いを口にした。有原航平東浜巨両投手の去就は不透明だが、熾烈な争いになることは確実。それでも、やることを信じるのみ――。自らの思いを秘めて、前に進む。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)