2025年の捕手陣…言葉を失った痛恨の1球 “運のなさ”すら恨んだ春先「これで負けるんだ」

高谷裕亮コーチ【写真:イワモトアキト】
高谷裕亮コーチ【写真:イワモトアキト】

長いシーズンを終えて「疲れたなあって感じですよ」

「はっきり言って、しんどかったですね」。日本一という最大の目標を手にした中で、長いシーズンを苦笑いで振り返ったのは高谷裕亮バッテリーコーチです。思わず漏らした言葉は「うわあ、これで負けるんだ……」。忘れられない春先のワンプレーを明かしました。コーチ1人1人にも焦点を当てながらプレーバックする2025年。捕手陣が直面していた苦悩について、赤裸々に思いを語りました。

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続きの内容は

海野だけじゃない!優勝に欠かせなかった「3人の捕手」の名前
痛恨の1球後、高谷コーチが「どうしよう」と考えた策
来季2軍で高谷コーチが目指す「若鷹ライバル化計画」の全貌

――高谷コーチにとってどんなシーズンだった?
「正直しんどかったのはあります、もちろん。最初、とんでもない負け方からなかなか波に乗れなかったのもあった。はっきり言ってしんどかったですね。終わってみたら、選手たちがよく頑張ったなと思います。あとは僕もすごく勉強させてもらいました」

――シーズン序盤の苦しさもあったと思うが、今年学んだことは?
「思ったことをしっかりと選手に伝えてコミュニケーションを取る。そういうところも含めて、学びは多かったです。最初はいろいろと自分の形を変えてやったところもあったんですけど、そういうことじゃないんだなと。自分がやってきたことがあって、当然自分なりに戦略も考える。それを踏まえつつ、選手の話やアナリストの話、投手コーチの話……。みんなの話を聞いたうえで『さあ、どうしようか』と考えていかないといけない。それは、あらためて学ばせてもらったと言った方がいいかもしれないですね」

――コーチとして掴んだ日本一は、どんな瞬間だった?
「いや、もう疲れたなあっていう感じですよ(笑)。でも本当に選手たちがみんな頑張ったことが全てじゃないですかね。もうそれに尽きると思います」

海野の成長はもちろん「みんなで頑張った」

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――今年を振り返ると、海野選手の存在が欠かせなかった。春先には厳しい言葉もかけたと話していたが、彼の姿をどう見ていた?
「彼の成長ももちろんあるんですけど。キャッチャー陣みんなで頑張ったこと。海野が最後は多くの試合に出て、ああいう結果に繋がっていったじゃないですか。だけど、タニ(谷川原健太)も嶺井(博希)も(渡邉)陸も、誰が抜けても今年はダメだった。だからみんなで勝ち取ったと思っています」

――印象に残っているシーンや出来事は?
「いっぱいありすぎてね。マイナスで言ったらあれじゃないですか(3月30日のロッテ戦、海野隆司捕手のプロテクターにボールが挟まり、決勝点を献上)。あれが決勝点。『うわあ、これで負けるんだ』って思いましたね。あれは僕の中でも、すごくダメージが大きかったです。僕も15年やってきて何回あったかわかんないですけど。キャッチャーのせいとも言えないし、『ここまでツキがないのか』って。こんな決勝点の取られ方があるんだと。本当どうしようかなっていうのは考えたんですよ」

――あのプレーは正直、どうしようもない。
「どうしようもないです。顎を閉めたりとかはできると思いますけど、あれは無理ですね」

――高谷コーチにとっては、それだけ大きい出来事だった?
「大きいですし、すごく印象に残っていますね。そういう中でも交流戦で優勝して、リーグ戦も勝って。苦しい中でも勝ち上がってきたのは大きな経験値になると思います、選手たちにとっても」

2026年は2軍のバッテリーコーチに配置転換

――シーズン終盤からポストシーズンにかけて、勝つことで捕手も成長した。その中で見えたことや、感じた手応えは?
「ピッチャーの頑張りはもちろん、野手も打ってくれたと思いますし。うちらはゲームを作ることが第一の目標なんで。そこは、しっかりみんなで意見を出し合ってというか、力を合わせてできたんじゃないですか」

――来季は2軍のバッテリーコーチになる。どのようなことに取り組みたい?
「もう1度、若い選手としっかり向き合いながら。1人1人が強くなることによって、チームの活性化になると思うので。1軍でライバルをどんどん作っていけるように。そういうアシストというかサポートができればと思います」

(竹村岳 / Gaku Takemura)