3か国4球団でプレー…ホークスでの指導者は2年目
2025年、ホークスは5年ぶりの日本一を掴み取りました。1軍だけではなく、ファームのコーチ陣も濃いシーズンを過ごした1年間。牧田和久2軍ファームコーチが振り返ったのは、指導者としての「反省」でした。選手との適切な距離感を考えさせられた日々。若鷹に対して大切な「言葉選び」とは、どんなものだったのでしょうか?
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続きの内容は
フォームを意識すると陥る、投手の「思考の罠」
経験談は「想像が働かない」指導者が語る真の助言
投手が「悪い時にスパッとやめるべき」その具体的な理由
――ファームで過ごした1年、牧田コーチにとってはどんなシーズンだった?
「選手を教えることも大事なんですけど、自分自身もコーチ2年目。やっぱり選手とのコミュニケーションが大事だなと思いました。『こうしろ、ああしろ』と教えるにしても、選手の目線や感覚だと違う部分もあると思う。もう少し選手に寄り添った教え方ができたんじゃないかなと、反省する部分が多いシーズンでした」
――自身でも反省するほどだった。
「(適切な指導が)できていないというよりは、言葉選びですね。選手それぞれに考え方があるので、それに沿ったアドバイスの仕方ができたのかな、と。そこの部分が自分としても足りませんでした。僕にも『こうなっていった方がいい』っていう理想像がありますけど、選手からしたらかけ離れているかもしれない。だから一方的に『こうした方がいい』って言う前に、まずは『どうなりたいか』を聞くこと。そのうえで『じゃあこういうふうにできたらいい』っていうアドバイスも、振り返るとできたんじゃないかなと思います」
「1軍で活躍している選手には、目指している理想像がある。でも、それを(ファームの選手に)言っても、まだイメージが湧かないと思うんですよね。選手1人1人に合ったハードルがあるし、みんなが同じことをしているわけではない。そのハードルを上手く調整しながら、クリアできたら『じゃあ次はこうしよう』って進める方がわかりやすいですし。そのハードルはもう少し下げてできたらよかったのかなと思います」
「いいフォームだからといって抑えられるわけではない」
――牧田コーチの指導する姿は、選手との距離感を大切にしているように見えていたが、自身は反省があった。
「やっぱりピッチングフォームで悩む子が多いので。どう言えばいいのか、ちょっとあれなんですけど。じゃあフォームがいいから抑えられるということではないと思います。(状態が)いい時と悪い時って、何を考えているんですか、ということです。いい時って何も考えていないですよね。集中しているからこそ、フォームは意識していない。でも人間の修正能力って、悪い時ほど考えてしまうので。逆効果ですよね」
「だからピッチングするにしても、いい時は投げ込んで、悪い時はスパッとやめた方がいいよね、みたいなアドバイスはしているんですけどね。シンプルに考える方がいいはずなので。考えすぎることで自分のフォームばかりにフォーカスされると、目的を見失ってしまいますよね。最終的な投手の目標は、バッターを抑えることなので。いいフォームだから抑えられるわけではないというのは、選手たちに伝えています」
――現役時代には先発から抑えまで経験。海外リーグでもプレーするなど、数々の経験を指導に反映させている?
「いや、僕が経験したことを、選手が同じように経験するわけではない。『こういうことをした』っていう経験談は、想像が働かないといいますか。練習するにしても何を意識するのか、何を大切にするのかを教えていった方がわかりやすいかなっていう感じがします」
(竹村岳 / Gaku Takemura)