1年間抱き続けた悔しさ「みんなそうだと思います」
鷹フルでは、1人1人のコーチにも焦点を当てながら2025年を振り返っていきます。今回は、中田賢一投手コーチ(ブルペン補佐)の登場です。杉山一樹投手、藤井皓哉投手、松本裕樹投手の3人が見せていた“細かさ”とは? 必勝パターンの存在に信頼を寄せつつも、口にしたのは明確な危機感でした。「現有戦力のままではいけないので」。日本一になった今季を踏まえ、期待する若手の名前も挙げました。
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続きの内容は
・中田コーチが、あえて修正点を「伝えない」驚きの理由
・「連覇へ現有戦力ではダメ」首脳陣が描く育成の青写真
・投手コーチが名指し!来季のキーマンとなる「若鷹の真名」
――今シーズンを振り返って。
「2024年シーズンに日本一になれなかった悔しさはすごく、倉野(信次)さんも若田部(健一)さんも含めて感じたので。今年はより、突き詰めながらというか。選手に伝えられるものはしっかりと伝え、もう1段階レベルを上げて進めていける感じはありました」
――昨年DeNAに敗れた日本シリーズの悔しさをどのように抱きながら過ごしてきた?
「みんなそうだと思います。あそこまで行って、ああいう形で連勝してからの連敗だったので」
――中田コーチの中で、ここを今年は変えたという部分は?
「いっぱいあります。話し出したらだいぶ時間がかかるんですけど。(小久保裕紀)監督を含め、倉野さんからもそうですけど、『自分自身を常にアップデートして、代えの利かない存在になりなさい』という方針でコーチ陣もやっているので。1年1年、なにかしらできることを増やして、選手に還元して、それが結果につながるように。今年やってきた部分を『もっとこうできるんじゃないか』って、常にアップデートしながらやっていきたいなというところはあります」
中田コーチの「ブルペン補佐」とはどんな役割?
――倉野コーチが「1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)」、若田部コーチが「ブルペン担当」という肩書き。中田コーチは「ブルペン補佐」だが、どういう役割だった?
「どちらかというとデータ方面ですね。ピッチャーのリリースポイントや変化量も見ながら。ピッチャーの特徴と、対バッターのデータを頭に入れながら、『この球種の方が打てないんじゃないか』っていうアドバイスもそうですし。悪くなってきたところの修正も踏まえて、倉野さんとは話し合っていますね。ゲームごとのフィードバックもそうだし、悪いところは戻す、いいところはさらに伸ばすっていうのをやりながら」
「さらに試合になれば自分自身ではなくて、バッターと対戦するので。相手の特徴をしっかりと伝えてからマウンドに上がってもらう。そんな感じですかね。味方と相手の両方。個人個人がレベルアップするために、抑えるためのアドバイスをしているところです」
――杉山投手、藤井投手、松本裕投手はデータに対してすごく興味を抱いていると聞いた。実際にはどういう姿?
「その3人に関しては、投げた感じの細かいところを言ってきますね。『リリースポイントが前じゃなくなってきている』とか。スライダーにも回転の角度があるんですけど、それが寝ていたら高めに浮きやすくなるので。『もう少し立てた方がいいよ』みたいな話もしますし。そういう細かい話を1つ1つ詰めながら、シーズン中はやっています」
「選手ごとに、疲れてきたらこういう傾向が出るというのは僕の中でも把握をしながら。選手に伝えるかどうかは倉野さんや若田部さん、アナリストの人たちとも相談するんですけど。『今はちょっと伝えない方がいいかもね』という場合もあります。修正をすることで怪我につながるかもしれませんからね。コンディション面も含め、総合的な判断で選手たちに声をかけることが多いです」
「弱気な発言があれば僕も包み込めるように」
――今シーズン、印象に残っているシーンは?
「バッターの特徴を、踏み込んで知ろうとしてくれる選手が増えた点は良かったですね。選手それぞれに興味があるし、自分の投球や感覚について調べる子は多かったんですけど。相手のことも見ながらマウンドで投げられる選手は増えたんじゃないかなと思います。自分のことはしっかりと理解しつつ、『ここでこれを投げたら危ないよな』と察知しながら投げる。その1球に対する理解度が増せば、初球から簡単にストライクを取れたり、間違えてはいけないところも投げ切れると思うので。その点で言うと、まだもう1つ超えてほしいっていう選手もいます。自分の声かけも含めて、引き上げていかなくてはいけないところです」
――ぱっと思い浮かんだのは木村光投手だが、成長を感じるところはあった?
「光もそうですけど、(松本)晴もそうですよね。昨年よりも1個踏み込んで相手のことを知ろうとしていたし、わからない時は僕に聞いてきます。僕としても常に答えられる準備はしておきながら、来年もそういった形を取っていきたいです。もっと深く話ができるようになっていかなければならないので」
――中田コーチは、来季も同じ肩書きで1軍をサポートする。どんな2026年にしたい?
「もう1段階レベルアップしないといけない選手が多いですし、チームとしても連覇を考えると現有戦力のままではいけないので。今年頑張ってくれた3人(杉山、藤井、松本裕)が健康で同じ成績を残してくれればいいですけど、そうならない事態も考えながら進めないといけないですし。先発も中継ぎも、次に出てくる投手を作っていきたいですね」
「選手たちも危機感はあると思いますよ。リリーフの3人が頑張って投げてくれましたけど、そこに追いついて追い越さないと、この世界では生き残っていけない。それは本人たちが一番感じていると思うので。そこのサポート、相談ができたら。僕は選手とも年齢は近いですし、弱気な発言があれば包み込めるように話もしていきたい。なかなか言えないような心のしんどさもあると思うので。アプローチの仕方を工夫しながら、うまくまとまっていけるように」
――同じピッチングスタッフで3年目を迎える。なかなかないこと。
「この2年間、同じ形で進められているので。倉野さん、若田部さん、自分でやらないといけないことが明確にはなっていると思います。なかなかないことではありますけど、最初にも言ったようにアップデートしていきたいですね」
(竹村岳 / Gaku Takemura)