「お前はどうなりたいの?」 甘えを消した山川穂高の背中…佐藤直樹を変える“座学”

山川穂高(左)を笑顔で迎える佐藤直樹【写真:古川剛伊】
山川穂高(左)を笑顔で迎える佐藤直樹【写真:古川剛伊】

佐藤直樹が主砲に弟子入り

「去年のきつさが1だとしたら、今年は120です(笑)」。冗談めかして笑ってはいたが、その瞳にはこれまでにない“飢え”のような光が宿っている。佐藤直樹外野手が、劇的な変貌を遂げようとしている。

 今季はひとつの転機になった。自己最多を大幅に上回る104試合に出場。4月8日に出場登録されると、その後は1度も離脱することなく1軍の戦力としてシーズンを完走した。確かな自信につながった一方で、ポストシーズンで味わった「ベンチ外」の悔しさが火をつけた。「レギュラーになるつもりで頑張ります」。その言葉を行動に移すため、背番号30は新たな扉を叩いた。

 向かった先は山川穂高内野手のもとだった。11月から来春キャンプ前までの3か月間、主砲と行動を共にする。日々、技術練習や厳しいトレーニングに励む中、自身の変化を少しずつ実感し始めている。そんな中でも、特に勉強になっていることは、山川がホワイトボードを使って行う“座学”だった。

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続きの内容は

山川が教える「プロとして一番大事なこと」とは?
佐藤直樹の覚悟を変えた「未来への問い」
オフの「甘え」を消した山川の”背中”…「休んでいる暇はない」

一変した意識…「休んでいる時間がもったいない」

「毎日違う話をしてくれるので楽しいです。座学もたまにあるんです。そんなにガチガチではないですけど。山川さんがホワイトボードに書いたりして、それを聞いています」

 バットを置き、ホワイトボードに向かう山川と、それを見つめる佐藤直。議題に上がるのは技術論だけではない。 「話が上手いので、喋っていて楽しいです。この前は『集中とはなんや』という話から始まって」。メンタル面のトレーニングや、プロ野球選手としての心構えまでを学んでいる。

「『将来的にお前はどうなりたいの?』とか、『こうやってたらなるようになる』みたいな。モチベーションに繋がるような言葉をかけてくれます」。その表情からは充実感があふれる。

「ほぼ休み」だった過去…吹き飛んだ“甘え”

 これまでのオフは「今年に比べれば、ほぼ休みみたいなものだった」と佐藤直は明かす。ジムで体を動かし、ティーを打つ程度。「休める時期が今しかないので、休もう」というのが本音だった。だが、今年は違う。「休んでいる時間がもったいない」。オフでも毎日バットを振る主砲の姿を見て、甘えは吹き飛んだ。

「山川さんがそんなことしているのに、僕なんかが休んでいる暇はない」。秋季練習を午前で終えると、昼からは山川のもとに向かい技術練習を行った。イベントや球団行事への参加以外で休みはほぼない。

「数字的にはまだまだもっといけると思うので。一からまた見つめ直して、来シーズンもっともっと活躍できるように頑張りたいなと思います」。そう語る佐藤直の表情に迷いはない。流した汗の分だけ、背番号30は強く太くなっていく。来季、グラウンドで見る佐藤直の姿は一層たくましくなっているに違いない。

(飯田航平 / Kohei Iida)