藤野は来季で育成5年目…フェニックスLには参加せず
通達されたのは、まさかの“練習制限”だった。育成の藤野恵音内野手は今オフ、秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」に参加せず、ファーム施設「タマスタ筑後」でトレーニングに明け暮れた。
今季はファーム非公式戦で打率.350をマーク。7月末の支配下登録期限までに吉報は届かなかったが、シーズン後半は2軍での出場も増えた。最終的にウエスタン・リーグで71試合に出場し、打率.249の成績を残した。
来季で育成5年目を迎える藤野にとって、フェニックス・リーグはオフ最大のアピールの場。そんな中、荒金久雄野手統括コーディネーターと大塚潔1軍コンディショニング担当から呼ばれ、告げられたのは“筑後残留”。「クビかな」と危機感を募らせた。
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続きの内容は
・クビの不安を解消した首脳陣の“真の狙い”
・初めて受けた「野球が1時間だけ」の練習全貌
・支配下へ向け藤野が再挑戦する「あの守備位置」
「フェニックスに行くものだと思っていたので、『行かない』って言われて『やばいな』と思っていたんですけど。説明してもらって納得しました。そういうことだったら、しっかりやろうと思いました」
提案されたのはフィジカル強化だった。「今年は2軍戦に結構出て、試合経験を積んだので。自分に何が足りないかといえば、パワーと言われて」。同じく育成の山下恭吾内野手、佐藤航太外野手とともに筑後に残り、ウエートトレーニングメインのメニューを渡された。
10月は練習時間は1時間のみ「今までで初めてで、変な感じでした」
10月から始まった約2か月間の強化期間中には、練習時間にも制限がかかった。「練習しすぎると体重が落ちてしまう」。GPSデバイスで体の動きを計測するデジタルブラジャーを着用し、10月中は野球の練習が1時間のみに限定された。
バットもグラブもほとんど使わない。人生で一番、“野球をしなかった”日々。「バットも振らないで、ダンベルを握って最後に少しバットを握るみたいな。今までで初めてで、変な感じでした」。アピールしなければいけない立場で、練習量が減ることへの不安はあった。
来季で育成5年目となる藤野。今オフには同学年のドラフト1位だった風間球打投手や、同じ育成の加藤晴空捕手が戦力構想外になった。何かを変えないと生き残れない世界であることを改めて感じ、トレーニングに勤しんだ。
11月からは徐々に練習量も増やし、コーディネーターと相談した上で内野守備にも再挑戦している。「シーズンでは外野をメインに考えているんですけど、選択肢を増やすためにもですね」。来年には大卒の同学年も入団する。悲願の2桁番号を手にするために、鍛錬のオフを過ごす。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)