来季から1軍、細川亨コーチの考えに迫る 現代野球の変化…渡邉陸は「成長している」

高谷裕亮コーチ(左)と細川亨コーチ【写真:竹村岳】
高谷裕亮コーチ(左)と細川亨コーチ【写真:竹村岳】

今季は2軍バッテリーコーチ…5年ぶりのプロで感じた明確な変化

 5年ぶりの日本一をつかみ取ったホークス。鷹フルではコーチ陣1人1人の言葉から2025年を紐解いていく。細川亨バッテリーコーチが語ったのは「野球が変わってきている」という実感だった。渡邉陸捕手から感じた明確な“変化”とは――。7日には2026年シーズンの組閣が発表され、来季からは1軍を担当することが決まった細川コーチ。どんな信念を胸に選手たちと接しているのか?

――細川コーチにとって、2025年はどんなシーズンだった?
「日々勉強でしたね。松山(秀明2軍)監督は経験が豊富なので。僕は(2020年に現役を引退してから4年間)プロ野球から離れていましたし、野球が変わっているんだなと感じましたね。いろいろと教えてもらいながら、プロのレベルというのを再確認するような1年間でした」

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続きの内容は

細川コーチが語る「変化」の真意とは
渡邉陸選手を成長させた”言葉”の秘密
海野選手への「プレッシャー」の理由

――プロの世界から4年間離れていた。戻ってきて、あらためて野球が進んでいることは実感した?
「戸惑うことはなかったです。社会人(ロキテクノ富山)でも“今の子”の人間性は見ていたので。大学の野球を見にいっても『変わったな』と感じていました。自分らの時とは違いますからね。そういう意味では社会人で3年、指導者をしてよかったなと思いますね」

――どんなところに野球の変化を感じる?
「人間性じゃないですか?」

――“今の子”という言葉に、それが表れている?
「もちろん、僕自身が勉強していかないといけない。全然違う話になりますけど、自分には子どもがいて、(他の家庭の)親御さんと交わす会話も昔とは全然変わってきています。親の教育から変わってきているのかなとも思いますし。そこが変われば人間性が変わって、野球も変わる。さらにメジャーリーグからいろんなデータが入ってきたりもするじゃないですか。情報がすごい時代。なんでもスマートフォン、SNSという時代だと思うので」

「自分は昔の野球も融合させながら、上手くできないかなと思っています。自分らがやってきた野球なので。『そういうこともあったよ』って。両方を上手く合わせて、接していけたらなって思いますけど」

意識したのは選手に「戻る場所」を作ること

――選手もオフシーズンにはいろんなところに勉強しに行っている。指導者も成長を続けないといけない。
「そう思いますし、それは柳田(悠岐)が入ってきた年(2011年)くらいから感じていました。先輩が変わらないといけない。だから指導者はもっと変化が必要なんだよな、って。自分が現役だった時はまだ昔のままっていう指導者が多かったですけど。『あ、こんな急に変わるんだ』っていうのは、柳田から衝撃を受けました。(ロッテ時代にチームメートだった佐々木)朗希もそうでしたよ。挨拶1つから教えないといけない。そういうところは人間性だと思うので」

――ウエスタン・リーグでチーム防御率2.83は3位、暴投数「44」はもっとも少なかった。バッテリー面での手応えは。
「自分が感じたのは、キャンプで(スローイングにおいて)スピード、タイムばかりを求めていたんです。そんな早く投げようとしてもボールが弱かったら……っていうのが自分の考え。強いボールを投げた方が、タイム的にもいいものが出る。そのためにはどうすればいいのか、各個人でやってもらった。数字が気になる選手ばかりだったので、まずはそれを一掃させました。谷川原(健太)にしても、渡邉(陸)にしてもそうです。ゆっくりでも形ができて、話はそれからですよね」

「僕はブロッキングでもスローイングでも、戻るところを作る。それを意識していました。絶対壁にぶつかるので、その時に戻れるように。それがあれば乗り越えた時の成長スピードも変わってくるはずなので。だから後半は、暴投とか後逸とか少ないなって思いました。そこもステップを踏みながらできたのかなと。1つ1つの動作確認っていうのは大切にしていました」

藤田悠太郎と練習に励む細川亨コーチ(左)【写真:竹村岳】
藤田悠太郎と練習に励む細川亨コーチ(左)【写真:竹村岳】

2026年は1軍のバッテリーコーチに就任

――渡邉選手に対しては投手から「キャッチャーらしくなった」という言葉も聞いたことがある。谷川原選手も含め、仕草や気配りといった面で成長を感じた?
「タニもすぐに1軍いきましたもんね。でも、言葉が変わったので。そういうところで成長したんだなと思います。それも自分自身で、ですよ。切り替えも少しずつ上手くできるようになった。陸は質問がすごく多くなりました。試合中でも『あれはこうだったんですか?』っていう時もあれば『こうでしたよね』って聞いてくることもある。頭がクリアで、整理した状態でプレーできているからです」

「後半になってからは、なおさらですよ。(ウエスタン・リーグの優勝を争った9月末の)中日戦の時も、『あれ、こうでしたか』って。最初、僕がここに来た時はそんな言葉まったくなかったんですよ」

――渡邉選手は、マウンドにいくタイミングや声かけ1つにしても、変化を感じたシーズン。
「陸は特に引っ張るのが上手いです。それがより強くなってきたし、できるようになってきた。成長は感じていますよ」

――1軍では海野隆司捕手が105試合に出場した。これから競争もあると思うが、選手たちにどんなオフを過ごしてほしい?
「下からは面白いやつらがどんどん上がってきますよ。藤田(悠太郎)、盛島(稜大)、陸はもう当たり前ですし。うかうかしていられないですよ。来年は来年、もうスタートしていますから。ステップアップしていかないといけないし、海野にももっと求めていきたいです。自分にも、競争相手がいましたから。(炭谷)銀仁朗が入ってきた時は『やばいな』って思いましたしね。ライバル視じゃないですけど、切磋琢磨してくれたら。海野にプレッシャーをかけていけるように」

(竹村岳 / Gaku Takemura)