昨年は日本シリーズで敗退…果たした“リベンジ”
ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で行われている秋季練習。第2クール初日の3日、投手陣の練習を見守った倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が取材に応じた。日本一に輝いた2025年を総括。短期決戦での継投に現れていた小久保裕紀監督の強い意思とは? また、来シーズンに向けた配置転換についても言及した。一問一答は以下の通り。
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続きの内容は
・来季の投手陣を左右するWBCの「鍵」
・倉野コーチが語る配置転換の「全貌」
・短期決戦で選手が超えた「限界」とは
――日本一という結果をどのように受け止めている。
「今年の最終目標だったので、それを達成できて本当に嬉しいですね。やっぱり去年のことがあったから、今年にかける思いっていうのは強かったですね」
――自身のSNSでは、日本一になってだるまの片目を書いていた。あれにはどんな意味が。
「去年リーグ優勝した時に片目を入れた。日本一になったらもう片目を入れようと思っていたら、負けてしまって入れられなかったんです。だから1年間ずっとあれ(だるま)をロッカーに置いていました。『絶対に今年こそ』って思ったけど、出だし(開幕直後)が良くなかったので。ここまで来ることが目標ではあったけど、正直簡単に想像はできなかったです。どこかで苦しいところが必ず出てくるので、それを乗り越えられるんだろうかっていう不安の方がありましたね」
――リリーフでは藤井皓哉投手、松本裕樹投手、杉山一樹投手の3本柱がいて、先発陣では2桁勝利が4人生まれた。
「本当に素晴らしい。僕の想定をはるかに上回ってくれましたね。本当に感謝しかないですね、選手には」
――先発もリリーフも安定していたと思うが、特筆するような要因はあったのか。
「最初は安定していなかったですよ、どっちも。でもその原因が何なんだろうって考えた時に、僕の中で強みがあった。僕は選手の力が落ちているとか、調子がすごく悪いっていうふうには思っていなかったです。新しいバッテリーになって、キャッチャーが代わって、それも含めて噛み合っていないんだなっていうところがあったので。普通なら慌てていろんなことをやり出すのかもしれませんが、僕は全く慌てなかったです。選手の力を信じるだけと思っていたので」
「結果が出ないのは調子が悪い、能力が低いのではなく、単なる噛み合わせ。ここはもう我慢だなと思っていました。だからそういう時に、まずはやるべきことをシンプルに。目の前のことに集中させるというのは意識していました」
――「疑わない」というのは簡単なことではないと思うが。
「そうですね。それは思っていました」
投手陣が見せた“振り絞る姿”に「感謝しかない」
――クライマックスシリーズ、日本シリーズは計11試合を戦った。短期決戦のパフォーマンスについては。
「(小久保裕紀)監督とも話したんですけど、本当に去年のポストシーズンの経験が生きたと思います。まあ僕が決めるわけではないし、監督の采配だと思うんですけど。監督の決断力はすごかったなって思いますね、正直」
――甲子園で行われた阪神との日本シリーズ第5戦では杉山投手が回またぎを見せた。
「そこも当然ありましたし、それ以前にもたくさんあったので。監督もポストシーズンの前に、『今年のCSと日本シリーズは、こういうふうにやっていくぞ』っていうのを明確に話してくれましたから。僕も最善の準備をさせてもらいますっていうことで、話はしました」
――短期決戦を前に、小久保監督が旗印を掲げた?
「そうです。それに対する最大限の準備をこっちがするだけだったので。本当に実を結んでよかったなというふうに思いました」
――リバン・モイネロ投手と有原航平投手を中4日で起用した。リリーフ陣にも連投があるなど、振り絞っている姿が印象的だった。
「本当に選手に感謝しているし、力を振り絞ってくれたと思います。だけど、やっぱり最後こそ頑張ってほしいんですよ。昨日の(ドジャースの)山本由伸投手もそうだし。メジャーリーグでもそういう起用は実際にあることなので。限界値はもっと高いところにあるのに、自分で可能性を塞いでしまっていることもあるかもしれない。選手が思う限界を超えてほしいです。僕もアメリカで“この時期の野球”を目の当たりにしましたから」
「だからああいうふうにメジャーリーグに刺激を受けて、限界は100球じゃないよね、もっとできるよねって示してくれたような。今年のワールドシリーズはすごく勉強になったし、選手の刺激にもなるんじゃないかなって思いましたね」
来年3月に開催されるWBCがポイントに
――すでに来シーズンへの準備は始まっている。投手陣はどのように整備する?
「いろいろあると思うんですけど、間違いなく今年のようにはいかないです。なぜかと言うと、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)があるので。これが1つのポイントになると思います。WBCがある年っていうのは本当に難しくなるし、僕もその経験はしているんで」
――倉野コーチで言えば2017年がその経験にあたる?
「前回(2023年)はアメリカにいた。ちょっと来年は、今年とは同じようには全くいかない。だからこそ、今からの準備というか、底上げが必要だと思っているので。このオフがすごく選手にとって大事になってくるから、その意識付けをどれだけできるか。一緒に練習ができない時期にもなるので、そこは大きな仕事かなと思いますね」
――この時期と言えば投手の配置転換が行われる時期でもある。頭の中に描いていることは?
「オフの前に言っていきます。もうオフシーズンに入る前に。みんなと会える時に、(来季は)最初からこういうふうにやっていこうって話はこれから伝えていきます」
――すでに構想は頭の中にある?
「もちろん。はい」
(竹村岳 / Gaku Takemura)