浸透した「康平」呼び コーチの雷を逆手に取った“キャンペーン”…「僕がスベってる」

大友宗【写真:竹村岳】
大友宗【写真:竹村岳】

大友の愛称が広がったシート打撃

 一見すれば“ベタベタ”な愛称には、意外な理由があった。育成3位ルーキーの大友宗捕手は、チーム内で「こうへい」という呼び名で親しまれている。名前の読みは「そう」にも関わらず、なぜ全く違う名前で呼ばれているのか。その背景を探ってみると、大友自身の“ある行動”がきっかけとなっていた。

 一体なぜ「こうへい」と呼ばれるようになったのか――。その経緯には、思わず笑ってしまうようなエピソードが隠されていた。意外にも、この愛称が一気に広まる決定的な出来事が、春季キャンプで起こった。

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大友選手が明かす、愛称「康平」誕生秘話
一喝が転機に!大友流チーム溶け込み術
登場曲も!「康平」徹底浸透の舞台裏

 キャンプ中のシートバッティング、大友は打った後に走るというルールを知らず、その場に立ち尽くしてしまった。その瞬間、雷のような一喝を発したのが関川浩一コーディネーター(野手)だった。

「こうへぇぇい!!」

 グラウンドに響き渡る謎の名前。まだ春先で、大友のフルネームをしっかり覚えているチームメートも多くはなかった時期。突然の大声に、周りの選手たちは「誰? 誰?」とキョロキョロ。そんな状況下でも、大友は「あ、これ俺のことだ」と瞬時に察知。すぐに「はい!」と返事した。

「ふざけてるのか、本当に怒っているのか分からなかったんですよ(笑)。『こうへい!』ってガチで言うんですから。僕がスベってるみたいだから、やめてくれよと思いました……」。“大物アーティスト”の名前もじりに思わず苦笑を浮かべた当時を振り返った。

ハイタッチする大友宗(左から2番目)【写真:竹村岳】
ハイタッチする大友宗(左から2番目)【写真:竹村岳】

最初はアイスブレイクのつもりも…

 しかし、大友宗という男は、そんな出来事をチームに溶け込むためのコミュニケーションツールに活用した。自ら「康平と呼んで」と“キャンペーン”を展開し、これが予想以上にチームに浸透。「最初のアイスブレイク的な感じで言ったのが、一気に浸透して。今はもう8割が『康平』です。だけど、コミュニケーションが取れたら何でもいいんです」。本人も驚くほど、すっかり定着した。

 この徹底ぶりは、登場曲にまで及ぶ。チョイスしたのはもちろん、本家・大友康平さんの「ff(フォルティッシモ)」。「なんかもう、スベってる感がすごくて嫌なんですよね(笑)」と顔を赤らめるが、もう誰も止めはしない。今ではコーチ陣も「康平」と呼ぶのが当たり前。関川コーディネーターの一喝が思わぬ形で、大友宗をチームに溶け込ませるための“潤滑油”となっていた。

(飯田航平 / Kohei Iida)