ついに“公認”…映された「YAH YAH YAH」 応援歌に染まった本拠地、川瀬晃の反応は?

スコアボードの表示された川瀬晃の“応援歌”【写真:加治屋友輝】
スコアボードの表示された川瀬晃の“応援歌”【写真:加治屋友輝】

スコアボードのビジョンに映された「YAH YAH YAH」

 一体感を生む大合唱が、ついに“公認”となった。本拠地の大型ビジョンに映し出されたのは「YAH YAH YAH」の文字。オンリーワンの演出は、主力選手の証だ。接戦を制した16日の日本ハム戦。柳田悠岐外野手の決勝弾につながる四球を選んだのは川瀬晃内野手だ。

 アドバンテージを含め2勝0敗で迎えたクライマックスシリーズ・ファイナルステージの第2ラウンドは、再び投手戦となった。有原航平投手が6回無失点の好投を見せ、試合は終盤に突入。8回無死、それまでゼロを並べられていた相手先発・福島から山川穂高内野手が内野安打で出塁した。海野隆司捕手の犠打で1死二塁として、ベンチが動く。野村勇内野手に代え、川瀬を代打に送り出した。

 今季、ファンの間でもすっかり定着した登場曲、「CHAGE and ASKA」の「YAH YAH YAH」のメロディーとともに名前がコールされると、バックスクリーンのビジョンにも歌詞が映し出された。通常なら、固定で表示されるのは応援歌やチャンステーマ。“特別”な演出であることは、スタンドの誰もがすぐに理解した。また1つ“進化”した川瀬だけの大合唱。本人は本拠地の声援をどのように感じていたのか。

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続きの内容は

・川瀬晃が明かす「YAH YAH YAH」への本音
・首脳陣が川瀬を代打に置いた「真の狙い」
・柳田悠岐の決勝弾に川瀬が感じた「衝撃」

9月18日の首位攻防戦でもスタンドが“大合唱”

「シーズン終盤からずっと、こういう歓声をいただいている。本当に背中を押してくれているので。自分にとってもCSの1打席目でしたし、気持ちも入っていました。ファンの方々の声っていうのはすごいなと、あらためて思いました」

 終盤の勝負所。集中していただけに、ビジョンの文字には気が付かなかったそうだ。「え、そうなんですか!?」と驚きを口にしつつ、「嬉しいことですし、それに見合うじゃないですけど、期待を裏切らないようにこれからも努力していきたいですね。やっぱり自分は準備が大切なので」。謙虚に感謝するところが川瀬らしかった。

 9月18日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)でも、本拠地は「YAH YAH YAH」の大合唱に包まれた。川瀬が同点の8回1死満塁のチャンスで代打として登場。押し出し四球で勝ち越し点をもたらし、首位攻防戦を制した。本拠地を包んだ異様な雰囲気に「“打てる”って空気になっていますよね……」。ちょっぴり重圧も感じているが、まさに背番号0に対する期待の表れ。準備と努力を継続してきた川瀬なら、どんな時もファンの想像を超えてくれるはずだ。

続く柳田悠岐が3ラン「スーパーヒーローです」

 第1戦、第2戦と野手のスタメンは全く同じだった。首脳陣がポイントに挙げていたのは「9番・二塁」だった。今宮健太内野手を遊撃に置き、川瀬との比較で思考を巡らせた結果、二塁で先発したのは野村。レギュラーシーズンでも12本塁打を放った長打力を発揮し、15日には先制ソロを突き刺した。村上隆行打撃コーチは「勇はずっと状態がいいんですよ。見事に応えてくれました」と最敬礼する。そのうえで、背番号0に対する厚い信頼を口にした。

「代打に晃(ひかる)を残しておきたいっていうのがやっぱりありましたね。勇は後から行くというよりは、頭から出てリズムを作るタイプですし。守備のことを考えれば晃をスタメンで、という選択もあったんですけど。最終的には(小久保裕紀)監督の決定でした」

 川瀬本人も、首脳陣の真意を真っすぐに受け止める。「そう言ってもらえるのは嬉しいですし、自分はチームのためにやるだけですから」。試合を動かすチャンスを見逃さないように、淡々と準備を進めた。代打で冷静に四球を選ぶと、次打者の柳田悠岐外野手が決勝3ラン。「鳥肌が立ちましたし、やっぱりさすがだなって。スーパーヒーローですよ。ああいう一打を打てるからこそ、ホークスの先頭に立つ人なんだなと思いました」。主力と若鷹がガッチリと噛み合った。今季を象徴するような1勝だ。

 CHAGE and ASKAを登場曲に使うようになったのは、YouTubeで「太陽と埃の中で」という楽曲を聴いて「いいなと思ったからです」と明かしていた。「YAH YAH YAH」という名曲はチームにドラマを生み、自分だけの特別な演出となった。日本シリーズ進出まであと1勝。2025年のホークスを語るうえで、川瀬晃の存在は絶対に欠かせない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)