連覇の余韻…中村晃の一言が「嬉しかった」 午前2時30分、ポツリと漏らした“褒め言葉”

リーグ優勝した際の広報対応をメモしたノート【写真提供:西田哲朗広報】
リーグ優勝した際の広報対応をメモしたノート【写真提供:西田哲朗広報】

小久保ホークスが見せる組織力は「えげつない」

 パ・リーグ連覇を決めたホークスは、15日からクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージを戦います。ペナントレースを振り返って西田哲朗広報が明かしたのは、喜びを感じさせてくれた中村晃外野手の言葉でした。リーグ優勝を決めた直後、“ブース回し”と呼ばれるマスコミ対応において、背番号7の存在は「どうしても」というほどのこだわりがありました。

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 ファンの皆さんのおかげで、今年もリーグ優勝を果たすことができました。苦しめられたのは、やっぱり春先だったと思います。でも、僕は自信を持ってマスコミの方々に言っていました。「間違いなくここから巻き返します」と。最大で借金7を背負い、最下位に沈んだ状態で「今年は無理なんじゃないか」と言われていた時も、チームの力を信じられたのはやっぱり小久保(裕紀)監督の存在があるからです。実際に“内側”から見ているとわかるんですけど、本当に組織力がえげつないので。

 リーグ優勝を決めた9月27日の西武戦(ベルーナドーム)は、ビジターだったのでホテルに移動しました。優勝会見、ビールかけを終えると、選手たちが順番にテレビ局のインタビューに臨む“ブース回し”が行われます。これが最後の広報案件。去年の経験もあったので、そんなにドタバタすることもなく対応できました。細かい調整をしながら、上手く回すことができたと思います。全てが終わったのは、日付をまたいだ午前2時半くらいですかね。そこで晃さんから言われた言葉が嬉しかったです。

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続きの内容は

・中村晃が語った「ブース回し」の舞台裏
・山川穂高が「外された」意外な理由
・小久保ホークス連覇を支えた広報の覚悟

10分ずつ回っていくテレビ対応…引き出した選手の良さ

「ブース回しって、こんなにすんなり終わったっけ?」と。テレビ6局と球団公式で、計7か所。10分ずつで回していくのは去年と同じだったんですけど、それだけスムーズに回せたんですかね。そうやって言ってもらえたのは嬉しかったです。もちろん僕たちも選手の良さを引き出してもらいたい。その瞬間にならないとわからないこともありますけど、心が良い状態だと良い言葉も出てくるので。僕としてもやりたいことができました。

 7か所を同時に進めるので、どこかが早く終わったり、時間が押したりすると選手にも待つ時間が生まれるじゃないですか。特に監督の時間は注意しながら回すようにしていましたし、翌日もデーゲームだったので、できるだけ疲れも残さないように。マスコミの方々とも“中だるみ”しないように細かくスケジュールは調整していたんですけど、本当にその通り動くことができました。

 チーム一丸となって掴んだ優勝。今年のブース回しに、晃さんはどうしても出て欲しかったんです。苦しい時期に支えてくれましたし、今年を象徴する1人だったのかなと。そう思って事前に本人とも話をしていました。相談しているうちに「わかった」という言葉をもらえたので、あとは組みやすかったですね。1500安打という節目の記録もあって、シーズンを通して1軍にいてくれた。こういう形で晃さんに出ていただけたのは、僕も嬉しかったです。

西田広報が自ら“敵”に…山川穂高に感謝された理由

 近藤(健介)選手や上沢(直之)投手を組み合わせたり、どのコンビにするかも気を遣いました。去年は選手会長1年目、チームとしても4年ぶりの優勝だったので、周東(佑京)選手が1人で回った。いろんな意味で背負って発言をすることで深みが出ると思ってそうしたんですけど、僕としても同じことはしたくない。また違った一面を見てもらいたくて、今年は栗原(陵矢)と同じ組にしました。あの2人の関係性だからこそ生まれる掛け合いもありましたし、優勝の後だから見せられる表情もあったのかなと。見ていて微笑ましくて、そこも良かったですよね。

 一方で、今年は山川(穂高)選手はブース回しから外しました。春先から近藤選手、栗原選手、柳田(悠岐)選手を欠いて背負うプレッシャーも大きかったと思う。23本塁打、62打点はチームトップですし、十分貢献していると思うんですけど。この先の戦いでもっと爆発してもらうためにも。そうお願いしてみると「ありがとう」とも言ってもらえたので、理解してくれたんだと思いますね。(ファンの方々に)山川選手を見たいという気持ちもあったのかもしれないですけど、実は僕が自ら“敵”になった形です。

 彼に関しては、去年も絶対に活躍しないといけない、チームを優勝に導かないといけないっていう重圧を背負っていたと思います。今年になって連覇を成し遂げましたけど、このタイミングでは山川選手にはとにかくプレーに集中してもらいたかった。メディアの皆さんには申し訳なかったんですけど、それぞれが終わった時に「よかったね」と言い合えるのがベストなので。コミュニケーションは欠かさなかったつもりです。この先の戦いで爆発してもらえることを僕も期待しています。

 広報となって5年目。最終的に優勝できたので、報われたような気持ちです。苦難を乗り越えて、順位を上げながら成長していくチームは本当に頼もしかった。小久保監督も「あと2つ、山を登らないといけない」とおっしゃっています。目標である日本一を掴むまで、僕もプロとして絶対に気を抜きません。熱い舞台裏をお届けできるよう、引き続き頑張っていきたいと思います。

(竹村岳 / Gaku Takemura)