柳田悠岐や周東佑京らが次々と離脱…2軍も支えた春先の戦い
鷹フルでは松山秀明2軍監督の単独インタビューをお届けします。今季、ホークス2軍はウエスタン・リーグで71勝51敗5分け。最終戦までもつれた優勝争いに惜しくも敗れましたが、多くの若鷹が1軍で躍動する1年になりました。指揮官が振り返ったのは課題と収穫。「簡単じゃない。本当にすごいことですよ」と名前を挙げたのは、2人のスラッガー候補でした。
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「はい、お願いします」。1軍より一足先に“今シーズン”を終えた松山監督は、優しい笑顔でインタビュールームに姿を見せた。2軍監督に就任して2年目。1軍のペナントレースの話題になると、その表情は一気に引き締まった。
悲願のリーグ連覇を達成したホークス。柳田悠岐外野手や周東佑京内野手らが離脱し、チームとしても苦境を迎えていた春先には、2軍から次々と生きのいい若鷹が現れた。松山監督も「故障者がたくさん出たことで、選手が1軍に呼ばれることが多かった。ファームの目線でいうと、その影響で育成の野手が出場機会を得られました」と振り返る。71試合に出場し、202打席に立った藤野恵音内野手をはじめ、中澤恒貴内野手ら3桁を背負う選手が経験を積めたことは今季の“特色”だった。
「上が元気で、2軍の選手たちが1軍に呼ばれなければ、彼ら(育成)の出番も回ってこなかった。そういう意味では、チャンスを生かして頑張ってくれた。出番を与えられることも多かったし、その穴をまた育成選手が埋めるように2軍戦で試合に出て。そういうところでは有意義だったんじゃないかなと思います」
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続きの内容は
・山本&石塚が1軍で残した“爪痕”の全貌
・松山監督が語る、投手陣の課題と“お手本”
・小久保監督と松山監督の4時間議論の中身
山本&石塚が1軍で残した“爪痕”とは
4月には今季育成4年目を迎えた山本恵大外野手が支配下登録された。2軍でも圧倒的な成績を残し、7月15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)では左翼テラスにプロ1号となる逆転3ランをマーク。1軍の勝利に貢献して、初めてヒーローインタビューを経験した。晴れ舞台へと羽ばたいていった若鷹に、松山監督も目を細めた。
「山本なんて1軍が初めてという状態で、石塚(綜一郎)もそんなに経験がなかった。育成から支配下になって、彼らの力で何試合か勝ったじゃないですか。1人の選手が1軍を勝たせるって、1試合でもすごいことですよ。山本のホームラン、石塚ならデッドボールかもしれないけど(笑)。それが重なって何勝にもなって、レギュラーになっていく。だからこそ、まずはどんな形でも1軍に貢献することですよね」
6月20日の阪神戦(甲子園)では延長10回に石塚が決勝打を放った。主力クラスの選手ならもちろんだが、キャリアの浅い若鷹の一打で1軍を勝たせるのは「簡単なことじゃないですからね」と強調した。怪我人が続出した中、空いた“穴”を奪い合うように競争を繰り広げた。「バタバタしましたけどね。レギュラーがいないから勝てないじゃ済まされないし、いないから勝てないチームとも言われたくない。今年1年、カバーした選手は頑張ってくれたと思います」と指揮官も続けた。
課題が残った投手陣…川口&宮崎に求めるもの
一方で、投手陣には課題が残った。川口冬弥投手、宮崎颯投手らが支配下登録されたが「伸び切れていないのが現実。1軍で投げられたかと言われたら、投げられていないですよね」と松山監督。9月には2軍戦5試合で計52失点を喫する期間もあった。2人に限らず、課題に挙げたのは変化球の精度だ。
「やっぱりコントロール、精度が低いというのが明確な答えです。今の野球だと150キロ、155キロを投げようが、ストレートだけだと打たれる。いい真っすぐと向き合うことも大切ですけど、勝つためにはどういうピッチングをすればいいのかを考えてほしいですね。いい球を投げても、それ以上のバッティングをされたら打たれることもある。僕の1年間の反省として、ピッチャーにはそういうことを感じました」
お手本にするべき“例”として挙げたのが前田悠伍投手だ。2軍では78回2/3を投げて13四球という制球力の高さを見せた左腕。直球に加え、チェンジアップやカーブを駆使して、7月には1軍でプロ初勝利も挙げた。2軍監督として2年間、左腕の成長を見守ってきた指揮官は「どの球でもストライクが取れるから、自分が困らない。3種類くらいの球でカウントを整えられたら、バッターも迷いますよね」。6日から2軍は「みやざきフェニックス・リーグ」を戦う。それぞれの課題を消化すべく、宮崎の地で鍛錬を積んでいくつもりだ。
1軍と2軍がともに関西での遠征に臨んだ5月には、小久保裕紀監督と食事に出かけた。選手の育成について約4時間も意見を交換し「雑談ですけどね。監督には僕も言いたいことを言うし、言いたいことも言ってくれる。それをお互いに、いい感じに消化していましたよ」と明かした。未来を担うような若鷹がファームにはたくさんいる。指揮官たちの議論は、熱く盛り上がっていた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)