小久保監督は東浜の起用を「先発陣のバックアップ」と明言
先輩右腕の登板を大切にしようという思いが伝わってきた。およそ2か月半ぶりの1軍マウンドに立った東浜巨投手は、バッテリーを組んだ海野隆司捕手に対して感謝の言葉を口にした。
9月27日にリーグ優勝を決めて、ポストシーズンに向けて首脳陣は戦力を見極めている。東浜は7月20日の登板を最後にファーム調整となった。ウエスタン・リーグでは7勝3敗、防御率1.85と結果を残し続けてきた。10月3日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)で出場選手登録されると、2番手としてマウンドへ。5回に1死満塁のピンチを作って降板したが、2回1/3を投げ無失点の内容だった。
小久保裕紀監督は右腕のポジションを「バックアップ」と表現した。現在、1軍の先発投手は5人。緊急事態に備えるために、“6人目”として最善の準備をしてもらうつもりだ。待ちに待った貴重なチャンス。自分と“同じ思い”を胸にマスクを被ってくれたから、東浜は海野に心から感謝していた。
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続きの内容は
東浜投手が2ヶ月半ぶりに1軍で得た「確かな手応え」
海野捕手が明かす、東浜投手の気持ちを「知る秘訣」
高谷コーチが評価した、海野捕手の「献身的な姿勢」
7月20日以来の1軍登板…東浜が自らに言い聞かせてきたこと
「インコースを多めに使ってくれましたし、本当に引っ張ってくれたと思います。そこは感謝ですし、この1年の成果じゃないですけど。投げていて、頼もしくなったなと思いました」
2か月半ぶりの1軍登板で、海野とのバッテリーは今季初。近年習得したチェンジアップも積極的に使うなど、絶対にゼロを並べたい気持ちを“相棒”は理解してくれていた。「目の前の試合をやるだけだと、ずっと言い聞かせてきた。球自体も悪くはなかったと思うし、微調整もしながら上げていけたらいいと思います」。5安打を浴びたものの、準備してきたものは出せた。そう言い切れるのは、海野と密なコミュニケーションを交わせたからだ。
海野は今季104試合に出場。開幕から1軍でシーズンを完走し、リーグ連覇に貢献した。ファームから投手が上がってくる時は、必ず映像に目を凝らして状態を把握する。「シンプルに、巨さんの真っすぐがよかったからですよ」と謙遜したが、背番号62なりの細かな気遣いと準備が光った瞬間でもあった。この登板にかけていた先輩右腕の熱い思いは、投球を通じてしっかりと受け取っていた。
「それはもちろんですよ。巨さんがそういう気持ちで投げているのは知っていますし、こっちもゼロで抑えられるようにやっているので。一番は、ピッチャーが投げたい球を尊重すること。自分がどうこうじゃなくて、ピッチャーのためにやりたいっていう、それだけです」
高谷裕亮コーチも海野の姿勢を評価
リーグ優勝を決め、チームはポストシーズンを見据えて戦っている。高谷裕亮バッテリーコーチも、海野の姿を評価していた。自身の現役時代にも「『この投手に頑張ってほしい』という思いは僕もありました」としつつ「でも気持ちはみんな一緒。やることは変えません。どの投手に対しても最善の準備をするのがキャッチャーの仕事なので」とキッパリだ。“優劣”なんて存在しない。どんな瞬間も、勝つために手を尽くす。そんな献身的な人間が、チームを代表してマスクを被ることができる。
東浜も「自分にとって大事な1試合。まだまだ終わりじゃないですし、最後の最後まで諦めずにやりたいという思いで投げていました」と力強い口調で言い切る。先輩の「引っ張ってくれた」というコメントに、海野は「もちろん嬉しいですよ」と喜んでいた。1球にかける2人の思いが伝わってくるような登板だった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)