大関はチームトップの13勝目をマーク
想像以上の変貌に首脳陣も舌を巻いた。大関友久投手は25日、楽天モバイルパークでの楽天戦に先発し、7回無失点の好投を披露した。自身初の規定投球回に到達するとともに、優勝争いを繰り広げるチームに、大きな1勝をもたらした。
チームトップの13勝目を挙げた左腕だが、直近2試合はいずれも3回を投げきれずに降板していた。この日も、初回は2死満塁のピンチを招くなど、決して調子が良かったわけではなかった。
それでも、終わってみれば7回5安打無失点。小久保裕紀監督も「こういう大事な試合で勝ってくれて、大きいですね」と脱帽していた。この快投には首脳陣も驚いた試合中の“変貌”があった。そして、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が今季初めて提案した取り組みが、そのきっかけとなっていた。
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続きの内容は
・大関の劇的変貌 倉野コーチが驚いた理由
・大関に提案した倉野コーチの「秘策」
・不調から立ち直った努力の成果と決断
「長い間コーチをやっていますけど、あの状態から復活するというか、あそこまで劇的に変わることはなかなかないですね。珍しいというか、すごい。正直すごいなと思いました」
「すごい」というワードを何度も繰り返し、倉野コーチは感嘆を隠さなかった。長いイニングを投げる先発投手には、試合中の修正力が求められる。優れた先発投手ほどこの能力に長けているものだが、この日の大関は別格だった。
「悪かったら代えるしかないので。チーム状況的にも優勝争いをしているわけなので。でも、あそこまで立ち直ったのは、なかなかないパターンですね。それも大関が今までに積み重ねてきた努力の成果だと思います。素直にすごいなって思います」
この日、初回は2死から2四球と安打で満塁のピンチを招いたが、栗原陵矢内野手の好守もあって無失点で切り抜けた。3回にも2死から連打で一、二塁とされたが、ホームは踏ませなかった。4回以降は立ち直り、許した安打は内野安打1本のみ。圧倒的な投球で二塁すら踏ませなかった。
直近2試合はいずれも3回もたず…倉野コーチが初めての提案
優勝争いが佳境に入った9月、大関は苦しいマウンドが続いていた。11日のロッテ戦(ZOZOマリン)では2回6安打2失点、18日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)でも2回0/3を1失点で降板。そんな状況を打破するために、倉野コーチが今季初めて大関に提案したことがあった。
「フォームの矯正に今年初めて手を入れましたね。立ち上がりは、まだ完全には上手くいっていなかったですが、途中からうまく噛み合ってきた感じでした」
詳細こそ明かさなかったものの、投球動作の細部に修正が加えられた。シーズン終盤。慎重になりながらも、大関自身も決断した。「取り組み自体は大きく変えているわけではなくて、継続してなんとかいい方向に、という考え方も含めて修正できた」と左腕は振り返る。
チームの優勝マジックは2となり、最短で26日にもリーグ連覇が決まる。大関自身も開幕前に立てた13勝の目標を達成した。「まずは優勝に向けてというところ。CS、日本シリーズもあるので、自分の状態をしっかり上げていける、そんな1試合になりました」。左腕の“想像を超えた”復活。日本一を目指すチームにとって、これほど頼もしいことはない。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)