「怪我したからにはもっとうまく…」
様々な感情から解放された瞬間だった。9日の4軍戦で、正木智也外野手が待望の実戦復帰を果たした。左肩手術から5か月を経てグラウンドに戻ってきた25歳が、第1打席で放った左中間への特大弾。復活をアピールするのに十分すぎるものだった。
第2打席は四球を選び、第3打席は空振り三振。その後、4回で途中交代した。復帰戦の初打席で本塁打を放ち、確かな存在感を示したことはもちろんだが、大越基4軍監督が特に注目したのはベンチでの正木の表情だった。「いやー、すごかったですよ」。背番号31の振る舞いに指揮官が感じた驚きとは――。
「正木がベンチにいる時の顔、めちゃくちゃ良かったですよ。試合前と全然違ったから。なんかもう……すごく明るかった。安心したのが出たのかな」
大越監督のこの言葉は、正木が復帰戦に臨むにあたってどれほどの不安やプレッシャーと戦ってきたのかを示唆する。長期間のリハビリ、実戦から遠ざかっていたことへの不安――。抱いていた思いは計り知れない。そんな中で放った第1打席の本塁打が、それらのすべてを払拭した瞬間だった。大越監督はさらに続ける。
「やっぱり不安だったのかもしれないですね。怪我して、ここまで来ての1打席目。ああいう結果が出て、やっぱり嬉しかったんでしょうね。すごかったですよ。『え? こんな明るいの?』と思いましたもん。きょうは彼にとってもめちゃくちゃ良かったと思います」。この復帰戦が正木にとって最高の再出発となったことを確信しているようだった。
自信を深めた5か月…「いい期間を」
この1本は正木自身にとっても、そしてチームにとっても大きな意味を持つものとなっただろう。「やっぱり自信になりました。リハビリでやってきたことが間違っていなかったんだなとも思えたので。そこは自信にしていきたい」。苦しい期間を過ごしながらも、必死にトレーニングに打ち込んできた証となった。
「怪我した時はすごく悔しかったです。でも怪我したからには、もっとうまくなって帰ってやろうっていう思いでこのリハビリ期間を過ごしていたので。トレーニングコーチの方とも色々相談しましたし、そこはできる限りのことをやれたかなと思っているので。いい期間を過ごせたと思います」
正木が振り返る5か月間は単なるリハビリ期間ではなく、成長のための貴重な時間だった。この一打と、それに伴う明るい表情は今後の活躍を予感させる。「早くタイミングとか、実戦の勘を取り戻して1軍に行ってほしいと思います」と語る大越4軍監督。パワーアップした正木が1軍の舞台で躍動する姿を、多くの人が心待ちにしている。
(飯田航平 / Kohei Iida)