重田倫明広報が振り返る2週間の3軍遠征
ソフトバンクの3軍は、8月20日から9月5日まで関東遠征を行い、東京六大学連盟や東都大学連盟に所属する大学や、巨人、西武との練習試合を行いました。この2週間の戦いを、スタッフとして帯同した重田倫明広報が振り返ります。3軍を率いるのは斉藤和巳監督。「だからこそ上手くいっている部分が多い印象がありました」と重田広報が話す理由とは。ハードな環境から支配下登録を目指す若鷹たちの努力を語ります。
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今年1年は広報として九州、四国、関東、韓国と多くの遠征に同行させていただきました。やはり3軍の選手や環境を見ている方が僕たちとしてもプロデュースがしやすいんです。「なんでも聞いてください」と言えるくらいには、今シーズンでいろんなことを知ることができたと思います。
今回の関東は2週間以上の長期遠征でした。時期が時期ですし、8月以降はどういうモチベーションでやるのかという意味でも、難しいところですよね。それに加えて、環境面でも大変なところが多かったです。グラウンド整備も選手たちが行い、ボールボーイも中継ぎ投手が務めていました。そんな中でも選手たちを支えているのは監督・コーチの言葉です。特に、斉藤和巳監督だからこそ成り立つ部分があるなと、僕は見ていて感じました。
取材をお願いした時…斉藤和巳監督の返答は
斉藤監督は、どんな時も寄り添ってくれる親身な“お父さん”でもあるし、もちろん監督でもある。そして1人の人間としても選手と接してくれる。3軍ですから育成や教育という面もあるんですけど、様々な要素を一人で担っているように見えました。まだまだ若い選手が多いですが、明るくできているのは斉藤監督だからだと思います。「ここではこういう言葉をかけた方がいい」といった配慮や、練習の雰囲気作りに工夫を凝らしていることが伝わってきました。
3軍ではポジションごとに分かれて、試合後にミーティングを行います。今回の遠征では大差で敗れる試合もありましたが、監督はいつも淡々としていますし、選手を責めたり怒ったりしている姿は見たことがありません。悪いところが出ても、直接的に言うのではなく、柔らかく伝えている印象でした。選手とのコミュニケーションはコーチ陣がしっかりと取っていますし、選手たちも反省している。だからこそ「思う存分やっていい、チャレンジしていいんだぞ」という話が多かったように思います。1つのプレーに対しても、さまざまな角度から振り返りをしていましたね。
僕としても、監督とのやり取りがそんなに多いわけではありません。練習を見ていても、監督はファーストに入って送球を受けたり、ノックを打ったりと、常に選手のために動いています。合間の時間も少なくて、本当に忙しなく大変な印象です。しかし、取材をお願いした時や、「このテーマならどれくらいまで踏み込んでお話できますか」と尋ねてみると「全然踏み込んでこい」と言ってくださいます。裏方である自分たちにも、血が通ったような接し方をしてくれる。広報として「言葉」を一番大切にしているのですが、監督から学ばせてもらえることは本当に多いです。
現役時代に3軍遠征を経験「今の方が…」
僕も現役時代に3軍遠征を経験しましたが、ここまで過密なスケジュールではなかったと思います。今の方が厳しいと感じますし、育成選手だとチャンスがなかなか巡ってこないという苦しさもある。バス移動の辛さや、球場によっては空調設備が十分ではなかったり……。環境の過酷さを改めて感じる2週間でした。広報として2軍の試合にも行きますが、そこにはグラウンドキーパーがいて、ロッカーがあって、自分の準備に集中できる。時にはメディアの方々にも来てもらって、注目を感じることもできます。
3軍の選手たちは本当によく頑張っています。しかし、3軍にいる選手たちこそ、そうは思わないんだろうなとも感じました。厳しい環境に身を置いているからこそ、それが当たり前になっているのだと思います。非公式戦、練習試合ばかりだから「自分たちはなんでプロ野球選手になったんだ」と思う瞬間もあるはずです。様々な気持ちを抱えながら、こんな暑い中でも選手たちはプレーしている。花が咲くことを信じてプレーする選手、そして支えている監督コーチは純粋にすごいと思います。
どんな時も情熱と熱意を持ってグラウンドに姿を見せる斉藤和巳監督。刺激をいただきながら、僕も毎日を過ごすことができました。大変だけど、ワクワクさせられる。奮い立つ選手たちを見ながら、自分ももっと頑張っていきたいです。4軍では大越基監督という素晴らしい方が指揮をとっています。シーズンも残り少なくなってきましたが、まだまだ試合はありますし、ファンの方々に楽しんでいただけるように僕たちも準備していきます。優勝争いをする1軍はもちろん、ぜひファームの試合も見にきてみてください。
【動画提供:重田倫明広報】
(竹村岳 / Gaku Takemura)