杉山一樹が選択した「2.6%」 実感する“徹底マーク”…9回がすんなりと終わらない理由

楽天戦の9回に登板した杉山一樹【写真:小林靖】
楽天戦の9回に登板した杉山一樹【写真:小林靖】

リーグトップの57試合登板…右腕が覚えた違和感

 すんなりと抑えられていないことは、自分が一番わかっている。シーズン最終盤に差し掛かり、他球団から“徹底マーク”を受けているのが杉山一樹投手だ。「全然違いますね」――。右腕が口にしたのは、明らかな違和感だった。

 6日の楽天戦(みずほPayPayドーム)、1点差で迎えた9回のマウンドに杉山が上がった。1死を奪った後、ゴンザレスには四球を与えたものの、最後は村林を右飛に仕留めてリードを守り切った。この日投じた18球には確かな意図が隠されていた。選択したのは「2.6%」――。右腕が明かしたのは、繊細な“野球観”だった。

「今は単純に空振り三振が取れていないので。追い込まれてからのフォークを振ってくれないですし、真っすぐでいったら真っすぐ待ちでしばかれますし。だからきょうは久々にカーブを使いましたけど。これからはカーブも必要かなって感じです」

 リーグトップの57試合に登板し、同3位の24セーブを挙げている今シーズン。DELTAのデータによると、これまでの投球割合のうちストレートとフォークの2球種が占める割合は97.2%にのぼっており、カーブはわずか2.6%だった。100球中で3球にも満たない確率でしか投げてこなかった球種を選択したのには意味があった。

9回を抑え、ハイタッチを交わす杉山一樹(左)と海野隆司【写真:小林靖】
9回を抑え、ハイタッチを交わす杉山一樹(左)と海野隆司【写真:小林靖】

四球も「全然オッケー」…語った守護神の覚悟

「これだけ投げていたらやっぱり対策されますし、相手の対応も全然違いますね。今はそもそも(2ストライクに)追い込めていない。その前に早打ちされることが多いですし、やっぱりフォークを振ってくれないので」

 相手もやられっぱなしで終わらないのがプロの世界だ。8月19日の西武戦以降で登板した7試合のうち、走者を出さずに3者凡退で終えたのはわずか1試合のみ。今季3敗目を喫した8月24日の日本ハム戦を除く6試合でセーブを挙げているが、一筋縄ではいかない難しさをひしひしと感じている。

「もちろん(打者)3人で終われればいいですけど……」。そう口にした杉山だが、一方で今の投球内容を不満に感じてはいないという。

「きょう(6日)もゴンザレスにフォアボールを出しましたけど、あそこは全然オッケー。僕と海野(隆司)が勝負にいった球でも、たまたま向こうがそれを張っていた場合にホームランがあるので。(ゴンザレスの)次の黒川君、村林君は一発という意味ではあまりイメージがなかったので。リスクをどれだけ減らして、チームが勝ちで終われるかを選択している感じですね」

 その力を認められたからこそ、今は“真の戦い”と向き合っている。シーズンが深まるにつれ増している1点の重み。連覇に向けて身を削るような日々を送るチームとともに、「守護神・杉山一樹」も懸命に戦っている。全ては秋の歓喜に向けて――。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)