野村勇の常識壊した山川の金言 「あかんかったらクビ」…“キャンプ飯”で受けた衝撃

あらたが深堀り…飛躍の裏にあった“エピソード”

 鷹フル特任記者、むなかったんのあらたです! 3回目となる記事のテーマは「野村勇選手の覚悟と変化」についてです。今季ここまで104試合に出場し、打率.270、12本塁打、33打点、16盗塁と躍動する28歳。語ったのは「クビ」の2文字と、先輩から授かった常識から遠く外れたアドバイスでした。なぜ野村選手は“復活”できたのか――。ぜひご覧ください!

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「今年あかんかったらクビなんで」

 ほぼ全ての項目でキャリアハイの成績を残し、今やホークスに欠かせない存在となっているのが野村選手です。開幕当初は出番も限られていましたが、相次ぎ離脱した主力の穴を埋めて余りあるほどの活躍ぶりを見せています。そんな28歳の口から飛び出た言葉の重みと覚悟――。聞いている私にも思わず緊張が走りました。

 そんな野村選手が明かしたのは「今年にかける並々ならぬ決意」と「主砲・山川穂高選手から貰った“常識に逆らった”金言」でした。今シーズン、大きな飛躍の裏にあった知られざるエピソードとは――。

春季キャンプで山川に誘われた食事がきっかけに

 野村選手といえば公称174センチと小柄ながらもパンチ力があり、豪快なフルスイングで逆方向にもホームランが打てる“オンリーワン”のバッターです。

 そんな野村選手の大きな課題だったのが「ボールの見極め」。これまではストライクゾーンから低めに外れる変化球を振ってしまう状態が続いていました。改善するための取り組みとしては、ボールを引きつけて打つように意識し、ポイントをなるべく近くにしながら逆方向に打球を運ぶイメージでスイングするのが一般的です。実際に野村選手も入団してから昨季までの3年間は、ポイントを近くしてなるべく後ろでボールを捌く意識で打撃に取り組んでいました。

 この“常識的な考え方”を大きく覆させられたのは、主砲・山川選手の一言でした。激しいレギュラー争いが繰り広げられていた2月の宮崎春季キャンプ。ある日の練習終わり、山川選手から食事に誘われた野村選手がボールを捉えるポイントについて相談したところ、予想外の言葉が返ってきました。

「究極に前で捌いた方がいいんじゃない?」

 プロでの3年間や、今までの野球人生で受けてきたアドバイスとは真逆の言葉に、最初は驚いたという野村選手。ボールを前で捌こうとすると、空振りが増えたり、ボール球に手を出す確率が高くなってしまうとの“先入観”があったからでした。

野球人生での教えと真逆の助言…なぜ取り入れた

 それでも野村選手はアドバイスを受け入れ、実践することにしました。それはなぜか。 1つは引きつけて打つ打法は自分に合ってないという気持ちがずっとあり、何かを変えたいと思ったから。そして、もう1つの理由は冒頭の言葉にも滲んだ危機感からでした。

 12球団屈指の選手層を誇るホークスにおいて、今年が年齢的にも立場的にもラストチャンスと位置付け、強い覚悟を持って臨んでいた野村選手。変わらなければ明日はない--。その思いから山川選手の“金言”にかけてみることを決断したのです。

 キャンプから山川選手の打撃フォームを参考にし、研究しながら練習を続けると、大きな変化がありました。ポイントを前にして打つ“山川式”の打法は、野村選手にピッタリと合っていました。あれこれと考えず、とにかくボールを前で捌いて迷いのないスイングをすること。これまでにない手ごたえをつかむことができた瞬間でした。

 今までは色んなことを考えながら試行錯誤を続けてきた野村選手でしたが、この金言により心のもやが晴れ、自分の進むべき道が定まりました。「山川式」をヒントに手に入れた「野村勇打法」の効果は、キャリアハイの成績を表れています。

「今年あかんかったらクビなんで」

 この言葉には退路を断ち、覚悟を決めた“男の強さ”が詰まっていました。

【筆者プロフィール】
むなかったん あらた
1995年12月15日生まれ、宗像市出身。吉本興業所属の芸歴6年目。RKBのホークス応援団長を務め、2022年からRKBラジオでホークス戦全試合を解説。宗像市観光大使にも任命されており、2024年12月にコンビ名を「とらんじっと」から「むなかったん」に改名した。野球歴は小学2年から大学4年までの15年間で、福岡教育大3年時の2017年春季リーグでは外野手部門でベストナインに選出された。

(むなかったん・あらた)