5日の楽天戦で今季3度目の1試合4安打の固め打ち
“交流戦MVP男”の勢いと存在感がよみがえってきた。「先週くらいから、自分の中でタイミングが良くなってきたので。すごくいい形で振れていると思います」。さわやかな笑みで手ごたえを口にしたのは、柳町達外野手だ。
5日の楽天戦(みずほPayPayドーム)、「2番・右翼」で先発した柳町のバットから快音が止まらなかった。初回の中前打を皮切りに、今季3度目となる1試合4安打をマーク。四球を1つ選び、全5打席で出塁するなど、試合前の打率.282を.290まで上げてみせた。
「達はあれくらいずっと打っていたので」。小久保裕紀監督が驚く素振りさえ見せなかったことが、何よりもの信頼の証だ。交流戦期間中は3割6分を超える打率を誇っていた柳町だが、一時は2割7分台まで落ち込んだ。大事なシーズン終盤を迎え、再び状態を上げてきた28歳。首脳陣が指摘したのは、柳町のある“変化”だった。
「一度は意識が自分に向いたと思うんですけど、チームにまた目を向けられるようになったんじゃないかなと思います。チームを勝たせるために何をしなくちゃいけないか。打たなきゃいけないとかじゃなくて、ヒットが出なくてもフォアボールで出塁することもできていたので。そういう意味で『おかえり』と。ちょっと前から『おかえり、おかえり』って感じで見ていました」
首脳陣の目に映った「本当のチームのため」
そう説明したのは村上隆行打撃コーチだった。レギュラーとしてこれだけの打席を重ねるのは、柳町の6年間のキャリアで初めてのこと。当然、目に見える数字に意識が向かうのは当然のことだ。3割を優に超えていた打率が徐々に落ちていく中、復調のきっかけになったのが意識改革だったと村上コーチは語る。
「一番苦しんでいたのは交流戦明けじゃないですか。研究されて、また同じリーグの相手と戦うことになって。レギュラーになるためには誰しもが通る道だし、自分で乗り越えるしかなかったので。そこをクリアしてからは、理想に近い打撃ができているんじゃないかなと思います」
柳町自身も個人よりチームとの思いをより強く抱いている。「本当に自分のやるべきことの積み重ねだと思っているので。それ以外のことをやろうとしても多分できないですし、もう自分のやるべきことをしっかりやるしかないと思います」。大きな飛躍を遂げた1年も、「終わりよければ」でなければ意味がない。
5日の試合、7点リードで迎えた3回2死三塁の第3打席は2球で追い込まれながらも球を見極め、四球をもぎ取った。どんな場面でもできることをやる――。柳町の言葉が“綺麗ごと”ではないことが良くわかる1打席だった。
「フォアボールを選べているということは、打席での待ち方がいいというバロメーターでもあるので。続けていければいいなと思います」。ついに今季初の優勝マジック「18」が点灯したホークス。ラストスパートに背番号32の存在は欠かせない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)