2軍で見せた今宮健太の“行動” 「足りひんから3桁」斉藤和巳監督が若鷹に求めた姿勢

今宮健太【写真:竹村岳】
今宮健太【写真:竹村岳】

3軍遠征で見えた課題…見習って欲しいと語った今宮の行動

 プロの世界の厳しさを熟知しているからこそ、言葉は鋭い。「選手たちが真剣に課題を明確にして、自ら取り組めるのか。目の色を変えてどれだけできるのか。本当に上に行きたいのであれば、気が付くポイントは山ほどある」。斉藤和巳3軍監督の叱咤は、若鷹たちに“現実”を突きつけるものだった。

 3軍は8月20日から9月5日まで関東遠征を行い、東京六大学連盟や東都大学連盟に所属する大学や、巨人、西武との練習試合を組んでいる。成長も見られた一方で、8月23日の日大戦では継投ノーヒットノーランを喫するなど、大学トップレベルの選手相手に苦戦する場面もあった。

 9月1日の巨人戦(ジャイアンツ球場)では1-3で敗戦。打線はわずか2安打に抑え込まれ、守備も2失策に加えて記録に残らないミスもあった。試合後、斉藤監督が「見習ってほしい」と語ったのは今宮健太内野手が筑後で見せていた“姿勢”だった。

「今宮がね。レギュラーをずっと張っている選手が、2軍でサインが出ていなくてもバントをした。上に戻った時に絶対に必要やから、そこに不安を持って上がりたくないから、自らやった。それぐらい考えないとダメですよ」

 斉藤監督が挙げたのは8月13日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦。「2番・遊撃」で出場した今宮は同点の7回無死一、二塁で犠打を決めた。その後、廣瀬隆太内野手のセーフティスクイズなどで勝ち越しに成功し、試合に勝利した。

 今宮は左脇腹痛から復帰し、調整での出場だった。サインが出ていない中、自らの判断で決めた犠打。「自分が1軍で絶対必要やからこそ、自らやっている」と斉藤監督は代弁する。その後、今宮は1軍に復帰し、8月27日の楽天戦(秋田)で史上4人目となる400犠打を達成。自らの“生きる道”を真剣に考えてきたからこそ、積み重なった数字だった。

 2軍で今宮が見せていた姿勢こそが、斉藤監督が3軍に求めることだ。「1軍半の選手は色々なことが足りひんから1軍半の選手。ここにいるやつはさらに足りひんから、3桁の背番号を背負っている。意識が高い選手は自ら考えて動ける」。技術はすぐに上達しないが、考えることは意識をするかどうかの問題。「しっかり全てにおいて意図を持って欲しい」と願う。

斉藤和巳3軍監督【写真:川村虎大】
斉藤和巳3軍監督【写真:川村虎大】

斉藤監督は試合中ベンチに座らず「少しでも同じ感覚を…」

 今季から3軍は試合後にポジションごとのミーティングを行っている。それぞれその試合のいいところを話し合った後、全体のミーティングで代表の選手が他の選手の前で発表する。これも斉藤監督が「自らの考えを説明できるように」という理由で始めたものだった。

「初めはトップダウン形式のミーティングをやっていたんやけど、それでは(選手が)人前で話すことが少なかったから。(選手主体になって)普通に伝えるということができるようになった。けど、それをただこなしてたらあかん。意味のあるものにしていかないと。『こう言えばいいんや』『こうすれば大丈夫なんや』では何の意味もない。こちらがなぜこういう形に変えたのかという意図を汲んで、少しでも何かのきっかけになれば」

 斉藤監督自身は試合中、常にベンチへ座らず、立ったまま戦況を見守っている。「少しでも選手たちと同じ感覚を味わっといた方がいいかなと。その方が色々と判断や、試合の見え方も多分違うと思う。皆がどう感じるかわからんけど、常に皆と一緒っていうのを心がけています」。今季の支配下期限は終了したが、来年以降1人でも多くの選手に2桁の背番号を手にしてほしい――。厳しい言葉は、未来のホークスを担う若鷹たちへの期待の裏返しだ。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)