6月末にリハビリ組に合流…ドラ1村上泰斗の今
無念の離脱から約2か月――。タマスタ筑後の室内練習場でキャッチボールを再開した。2024年ドラフト1位・村上泰斗投手は現在、リハビリ組で調整している。「投げられるようにはなってきているので、あとは強度を上げていくだけです」。野球ができる喜びを噛みしめるように、明るい表情を見せた。
船出は順調に見えた。5月4日の火の国サラマンダーズとの4軍戦(熊本)で“プロ初登板”を果たすと、いきなり最速に迫る151キロをマーク。18歳は衝撃的なデビューを果たした。その後、3軍で経験を積んでいた中で、6月末に右肘と腰の炎症が見つかり、リハビリ組に合流した。
今シーズン中の復帰に向けてようやく光が見えてきた18歳は、「しんどくて悔しい気持ちがすごく強かったです」と振り返る。ボールを投げることができなかった2か月で直面した“苦しみ”と、体に起きた異変を激白した。
「動きたくても動けない、練習したくても練習できない。そんな状態で、自分にイライラしました。しんどかったです。急にご飯が食べられなくなったり、ご飯が目の前にあるんですけど吐きそうになったり……。体重も落ちましたね」
野球をやりたくてもやれないという焦りが、精神的な“しんどさ”に拍車をかけた。「やっと2軍で投げられるかもしれないという状況だったので……」。歩みが順調だったからこそ、突然の離脱はショックが大きかった。
確かな手応えがあっただけに、マウンドに立ちたい気持ちがオーバーワークを招いてしまった。「ちょっと(体が)張っている状態でも投げ込んだりしてしまって。その1つ1つが重なって、自分の限界を超えてしまったんだと思います」。
入団直後から村上を見守ってきた大越基4軍監督が、離脱直後の様子を振り返る「怪我の後、筑後で会ったときはいるのかわからないくらい暗かったですよ」。8月上旬、治療の関係で地元・兵庫に帰る直前だった。「地元に帰れて嬉しいか」と右腕に尋ねると、「嫌です。野球がやりたいです」と口にしていたという。
離脱で得た“気づき”「逆に怪我できて…」
「村上はまだトレーニングが足りない」。6月、大越監督はこう語っていた。今、その真意を問うと「高校野球はトーナメント戦。そこに合わせればいい。彼はそこで結果を残してプロに入った。でも、プロ野球はシーズンが長く、求められる体力はとてつもないんです」と“体作り”の重要性を明かしつつ、さらに続けた。
「でもただ伝えただけじゃわからないんです。今回(の離脱)でそれに気づくことができたらいいんじゃないかなと思います。早く気づいた人が勝ちなんです」。プロで1年間戦い抜くためのしなやかさやパワー、柔軟性や可動域は、日々の練習で身につけていくしかない。
8月に入って体を動かせるようになると体重も79キロ近くまで戻り、以前よりも増えたという。「今は体作りも順調にいっていて、1年目のこの時期に逆に怪我できてよかったなという気持ちもあります」。村上も身に染みた“気づき”があった。
村上の現状について、森山良二リハビリ担当コーチ(投手)は「キャッチボールを再開し、5~6割の強度で投げられています。色々なメニューにも参加し始めています」と順調な調整ぶりを説明する。謙虚で真っすぐな18歳。大越監督も「まずはしっかりと怪我を治してほしい。まだまだ先は長いですから」と期待を寄せる。一皮むけたドラ1右腕がマウンドに戻ってくる日を、誰もが待ち望んでいる。
(森大樹 / Daiki Mori)