柳田悠岐は「もどかしかったと思う」 “一番近くで見た男”が語る4か月半…見せなかった感情

柳田悠岐【写真:竹村岳】
柳田悠岐【写真:竹村岳】

29日の2軍戦で実戦復帰…中谷コーチが見た柳田の4か月半

 4か月半という長く苦しい道のり。それでも変わらない“ギータの姿”があった。

 柳田悠岐外野手が29日、ウエスタン・広島戦(タマスタ筑後)で実戦復帰を果たした。右脛骨の骨挫傷からおよそ4か月半ぶりの実戦。「楽しかったという気持ちもありますし、(打てずに)悔しい思いもあります。いろいろな感情がありますけど、本当に野球ができているという喜びが一番です」と振り返った。

 そんな長いリハビリ生活をそばで支えてきたのが、中谷将大リハビリ担当コーチ(野手)だった。就任2年目となる今季も、昨年に続いて柳田の復帰を後押ししてきた。「野球ができないのって、もちろんもどかしかったと思うんですよ……」。4か月半にわたった“我慢の日々”を共に歩み、復帰の瞬間を見届けた中谷コーチが思いを語った。

「本当に痛くて、歩くのもきつかった時期を知っているので。試合復帰まで来られたのは(リハビリに)携わった身としてうれしいですし、まずは無事に打席に立てたことが良かったと思います」

 球団の当初発表では「競技復帰は5月上旬頃の見込み」とされていた。しかし痛みがなかなか取れず、本人も「最初の2週間は『入院した方がいいんじゃないか』ってレベルでキツかった」と振り返るほどの壮絶な日々が続いた。それでも、柳田が周囲に見せる姿は普段と変わらなかった。

「怪我をして試合に出られない時間って誰にとっても良くないものだろうし、もちろんもどかしかったと思うんですよ。でも、そういうイライラみたいなものを表に出す人もいる中で、それを出さないのはすごいなと思いました」

 昨年も5月に「右半腱様筋損傷」で約4か月の離脱を余儀なくされた柳田。“完全復活”を期すシーズンで、またしても長期離脱に見舞われた。それでも「今年も浮き沈みなく、毎日いい練習をしていました」と中谷コーチを驚かせた。

中谷将大リハビリ担当コーチ(野手)【写真:竹村岳】
中谷将大リハビリ担当コーチ(野手)【写真:竹村岳】

周りにも及ぼした“柳田効果”

 復帰戦の後、柳田は苦しいリハビリを「もう修行だと思った」と振り返った。それでも若手と分け隔てなく会話を交わし、周囲と共に時間を過ごした。「自分だけ黙々とやるのではなく、コミュニケーションを交わしながら取り組んでくれたので、良い時間でした」と中谷コーチも感謝する。若手にとっても学びの日々となった。

 実戦復帰を間近に控えた頃、屋外で行ったフリー打撃では、左膝痛でリハビリ中の育成11位ルーキー・木下勇人内野手と会話を交わす場面があった。「技術はもちろんですが、人間的にもすごいと感じました。向こうから声をかけてくれました」。19歳は感謝を口にした。

 柳田の存在は間違いなく周囲にも影響を与えた。「普段なら一緒に練習できない高卒の子たちも、目の前でその姿を見られるのは大きな刺激になったと思います」。中谷コーチはその“波及効果”を語った。

復帰戦の後、取材に応じた柳田悠岐【写真:長濱幸治】
復帰戦の後、取材に応じた柳田悠岐【写真:長濱幸治】

柳田が口にした中谷コーチへの感謝

 そして迎えた29日の復帰戦。「自打球とか何回かひやっとする場面はあったんですけど、ようやくスタートできたんだなという気持ちで見ていました」。もう1度グラウンドに立つことができた、その姿を中谷コーチも感慨深く見つめていた。

 柳田自身も「すごく手伝って頂いて、(中谷コーチには)本当に感謝してます。去年もたくさん付き合ってもらって、ありがたい存在です」と頭を下げた。周囲にまで大きな影響を与えるギータの存在感。1軍のグラウンドで背番号「9」が見られるその日を、誰もが待っている――。

(森大樹 / Daiki Mori)2025.08.31