【連載・近藤健介】明かした選球眼の極意「絶対に必要なのは…」 18歳で迫られた生き方

近藤健介【写真:古川剛伊】
近藤健介【写真:古川剛伊】

今季はパ・リーグタイ記録の1試合5四球も

 鷹フルの人気企画「シーズン連載~極談~」。近藤健介外野手の第2回目、テーマは代名詞と言える「選球眼」について。通算出塁率が4割を優に超え、シーズン100四球を2度も記録している“選球眼の鬼”も、子どものころは「打ちたがり」だったそう。ボール球に手を出さないコツは、天才打者らしい“逆説的”な考えが根本にありました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ちゃんとゾーン管理をしっかりとすること。自分の打てるところに反応して、打てないところに反応しないかが大事だと思うので。準備の部分ですね。プロは年間を通して同じ相手と対戦するので。打ちにいって見逃すっていうのが最高の形ですけど、そう簡単に対応できないピッチャーもいるので。あとは自制心っていうところも大事かなと思います」

 昨季までのキャリア13年で通算出塁率は驚異の.418をマーク。最優秀出塁率のタイトルを4度も獲得し、これまで選んできた四球数は歴代39位、現役選手では6位の854個に上る。8月2日の楽天戦(みずほPayPayドーム)では、パ・リーグタイ記録の1試合5四球を記録。選球眼の“極意”とは何か――。その問いに近藤は少し考えたのち、こう答えた。

「ある程度打つこと。やっぱり打撃の数字が残らないと相手は怖がってくれないですし、際どいコースを責めなきゃいけないと思わないので。そこはもう絶対に必要だと思います」

 ボールを選ぶために打つ――。ある意味、逆説的な考えこそが天才打者を形作ってきた。そんな近藤も子どものころは「もちろん打ちたがりでした。フォアボールよりもヒットを打ちたいと思っていました」と明かす。選球眼を自らの武器と捉えたのは、いつごろからなのか。

日本ハム入団で選んだ“生きる道”…「翔平もいましたし」

「それはプロに入ってからですかね。試合に出始めたころは長打を打つ選手、中田(翔)さんがいましたし、陽(岱鋼)さん、もちろん(大谷)翔平もいましたし、(ブランドン)レアードもそうですし。っていうところからですね」

 横浜高から2011年ドラフト4位で入団した日本ハムには当時、強打者が並んでいた。「自分ができる役割をしっかりと考えて。まあ、札幌ドームでそこまでホームランを打てるイメージが湧かなかったのもありますし。まず試合に出ていくためには、塁に出ることがある程度必要だとは思いましたね」。18歳の近藤が試合に出るため、自らを見つめ直した末に見つけた“答え”だった。

 日本ハム時代は長打の印象があまりなかったが、ホークスに移籍後は2023年に本塁打王に輝くなど、がらりとイメージが変わった。そこにも近藤ならではの考えがある。

「やっぱりフォアボールだけでも魅力がないですし、ある程度は打たないといけないので。そのさじ加減っていうのはありますよね。基本的に四球を選びにいくってことはあまりないです。まずはしっかり打ちいって、カウントを作っていくというところじゃないですか」

“球界最強打者”の呼び声高い32歳の根底にある打撃理論は「選ぶために打つ」――。今後もけた外れの打撃技術と選球眼で、我々を驚かせてくれるに違いない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)