ネクストで見つめた柳田悠岐「いつもより…」 イヒネが感じたこと、試合前の“会話”

柳田悠岐(左)とイヒネ・イツア【写真:長濱幸治】
柳田悠岐(左)とイヒネ・イツア【写真:長濱幸治】

イヒネが感じた柳田の存在感

 憧れの先輩の復帰戦に胸が熱くなった。29日、タマスタ筑後で行われたウエスタン・広島戦。柳田悠岐外野手が「1番・DH」で出場し、右脛骨の骨挫傷からおよそ4か月半ぶりのゲーム復帰を果たした。「偉大すぎますね……」。試合後にそう声を漏らしたのは、昨オフに自主トレを共にしたイヒネ・イツア内野手だった。

 この日は「2番・遊撃」で先発。3回の第2打席で外角直球を綺麗に中前へ弾き返し、さらに盗塁も決めた。柳田も試合後の取材で「きょうもいいヒットを打って、盗塁もしてたので。いい選手やなって思いましたし、負けていられないなっていう気持ちです」と後輩を評価していた。

 シーズン中の公式戦で柳田と一緒に出場したのは初めてだと振り返った20歳。ネクストバッターズサークルから見た大先輩の姿はどのように映ったのか。“貴重すぎる”3打席を振り返った。

「すんごいワクワクしたっす。2軍ですけど、昔からずっと見てきたギータさんの後ろを打てたことは、夢が叶ったというわけじゃないですけど……。本当にうれしかったです」

 試合後に明かしたのは、紛れもない“リスペクト”だった。「全てがかっこいいっす。ずっと見ていた人なんで」。そう語るイヒネは野球少年の目に戻っていた。「本当にいつもよりも観客の声が大きかったです」。試合前からその存在感を肌で感じていた。

 昨オフには「せっかく同じチームに入ったので、お願いするしかない」と、自ら志願して柳田との自主トレにも参加した。「たくさん一緒に過ごさせてもらって、実力の差を感じました」と“師匠”との日々を振り返る。

「柳田さんは紛れもなく1軍の人なので。僕が頑張って結果を残して、1軍で一緒にやれれば」。試合後に明かしたのは大先輩と叶えたい“新しい目標”だった。師匠が自身のプレーを称賛していたことを本人に伝えると、「柳田さんは多分みんなに良い選手って言ってくれる人だと思うので(笑)」。謙遜気味に明かしたが、その表情は明るかった。

 試合前練習では「バットの話とかしましたね。あ、ドラマの話をして笑っていました(笑)」と無邪気に振り返った。積極的にコミュニケーションを交わし、今この2軍で共に過ごせる時間を無駄にはしない。

現在、2軍盗塁王のイヒネ「走れるもんなら…」

 7月度の「スカパー! ファーム月間MVP賞」を獲得するなど急成長が止まらないイヒネ。今シーズンの目標を尋ねると「毎日全力で頑張るしかない」と即答した。ウエスタン・リーグでは現在、25盗塁でトップに立っている。「周りの数字は変動するので、自分のことしか考えていない。正直、数字は追いかけていない。走れるものなら、ずっと走り続けたい」と意気込む。

 5月27日からのわずか5日間の1軍初昇格をきっかけに、目の色を変えて練習に取り組む20歳の姿は印象的だ。活躍をきっかけにメディアやファンからの注目も高まっているが、「気にしている余裕はないです。本当に目の前のことに必死なので」と語る。“師匠”と同じ場所、1軍の舞台で活躍するその日まで――。イヒネ・イツアは成長を止めない。

(森大樹 / Daiki Mori)