【連載・秋広優人②】巨人時代に味わった“野球の怖さ” 胸に秘める小久保監督の言葉

秋広優人【写真:古川剛伊】
秋広優人【写真:古川剛伊】

連載第2回は「打者として目指す姿」について

 人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」。秋広優人内野手の第2回は、「打者として目指す姿」がテーマです。巨人時代には松井秀喜氏が背負った背番号「55」をつけ、大砲候補として大きな期待を寄せられた22歳。ホークスに移籍した今、打者として目指す“姿”を明かしてくれました。プロ4年間で味わった様々な重圧や挫折……。それらを経て、たどり着いた“現在の答え”がありました。

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「ヒットの延長線上がホームラン」。ホークス入団後、秋広が取材の中で何度も口にしている言葉だ。3か月前の入団会見でも「率の方が自信がある」と、コンタクト能力への自信を覗かせていた。一方で、高卒3年目の2023年には121試合に出場して打率.273、10本塁打をマーク。長距離砲としての未来を期待する声も根強い。

 巨人で過ごしたプロ4年目の昨季を「迷った1年だった」と振り返る。「ホームランを打ちたくないわけではないんです」。未完の大器がぶつかった“壁”と、激白した思いとは――。

「ジャイアンツ時代、自分の中でホームランを打つことの難しさをすごく感じていました。『ちょっと一発打ってやろうかな』と思った時のズレというか……。(本塁打を狙うことによる)弊害を痛感したんです」

 昨シーズンは秋広自身もフォームや打席での考え方を試行錯誤する中で、「コロコロと形を変えすぎた」と振り返る1年だった。ファームでは96試合で打率.274を記録したが、本塁打は2本。1軍では5試合の出場で打率.143、わずか1安打に終わった。

「入団直後から(岡本)和真さんや(坂本)勇人さんを近くで見て、自分には足や守備が足りないと感じました。周りのすごい方からもたくさん期待の声もかけられて。だからこそ、ホームランバッターとして生き残る道を模索した時期もありました」

 打撃練習では規格外の打球を飛ばし、柵越えを連発する。しかし、「試合では打球の角度が上がらないんです」。これこそが、本塁打を狙った時に起きる“弊害”だった。「悩んだ末に、自分の自然な形で打つのがいいと思いました」。これが、“現時点”で導き出した答えだった。

現在、意識する小久保監督からのアドバイス

 今年5月12日に巨人からトレードで加入すると、15日に即1軍昇格し、16試合でスタメン起用された。6月13~15日のDeNA3連戦では、移籍後初本塁打を含む2度の勝利打点をマーク。3日連続でお立ち台に上がり、強烈なインパクトを残した。

「フルスイングの中でコンタクトする」。6月には小久保裕紀監督からこんなアドバイスを受けた。秋広自身もパ・リーグに移籍して感じていたのは、投手の球速の違いだった。「球の速い投手に対して、コンタクトを意識しすぎている」という指摘もあり、「フルスイングの中でしっかりコンタクトできるようにと、継続して意識しています」と語る。

 2軍に合流して1か月、鋭いフルスイングの中で、しっかりバットに当てることができている。「きちんと振った中で、コンタクトできているのは良い傾向なのかなと思います」と手ごたえを口にした。

 22歳で経験したトレードという人生の分岐点。環境の変化は間違いなく影響を与えている。巨人で過ごした昨シーズンは、「1軍に貢献できていないということが悔しい部分でした」と振り返る。ホークスでは自らの打棒で優勝を手繰り寄せてみせる――。

(森大樹 / Daiki Mori)