
5月に巨人からトレード移籍…秋広が連載「極談」に登場
人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」に秋広優人内野手が登場します。プロ5年目の今季、5月12日にホークスへ移籍。約3か月が経過した今、当時を振り返ってくれました。そして交換相手のリチャード内野手の活躍に感じたこととは――。22歳がありのままの心境を明かしました。
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秋広は21歳シーズンの2023年、121試合に出場して打率.273、10本塁打、41打点をマーク。身長200センチの長身から力強く振り抜くスイングに無限の可能性を感じさせる、22歳の未完の大器だ。
発表当時は、世間を驚かせた電撃トレード。ホークス入団直後の会見でも、トレードを伝えられた時、秋広自身が「すごくびっくりした」と語っていた。しかし、今改めて聞くと全く違った答えが返ってきた。
「予感とかは特にはなかったですけど、今思い出せば全く数字が出ていない中での1軍昇格だった。当時は全く分かりませんでしたが、今振り返ると『そういうことだったのかな』とは思います」
2軍スタートとなった今シーズン、イースタン・リーグで25試合に出場して打率.157、2本塁打、5打点と苦しんでいた。そんな中で5月3日に突然の1軍昇格。その9日後の同12日にトレードが発表された。
移籍後は約2か月間、1軍での日々を過ごした。6月13日からのDeNA3連戦(みずほPayPayドーム)では移籍後初本塁打を放つなど3試合連続でお立ち台を経験した。「僕の中では、新たなチャンスをもらったと思っています」とトレードを語る。先が見えなかった中、“きっかけ”になったことは間違いない。
目にしたリチャードの成績…漏らした本音
一方、トレード相手となったリチャード内野手は、巨人移籍直後に1軍へ合流し、初出場の13日・広島戦(マツダスタジアム)で即1号を放った。その後、当たりが止まり2軍降格も経験したが、8月19日のヤクルト戦(神宮)で5号満塁弾を含む4安打6打点と大暴れするなど、1軍の舞台で8本塁打。直近6試合で4発と存在感を発揮している。
「トレード相手のリチャード選手の成績は気になりますか?」
率直な質問に対して返ってきたのは、偽りのない本音だった。
「自分から見ようとはしないですけど、巨人のインスタグラムをまだフォローしているので、そこで打っているのを見ると、悔しい思いはしますし、負けられないなと。悔しいですね」
移籍直後の会見で「(巨人に)出さなければよかったと思ってもらえるように」と口にしていた秋広。「お互いが活躍して、そう思ってもらえるのがベスト」と、悔しさを胸に秘めつつ“Win-Winのトレード”にして恩返ししたいという思いを改めて口にした。
悔しい思い出がよぎる「優勝」の2文字
現在、1軍は2位・日本ハムに0.5ゲーム差で首位に立つ。秋広にとって「優勝」の2文字は、悔しい思い出がよぎる言葉でもある。昨季、巨人はセ・リーグ優勝を果たしたが、自身はシーズン終盤を2軍で過ごし、ビールかけの輪の中にいなかった。
「リーグ優勝の場にいないというのもそうですけど、去年はシンプルにチームに貢献できない1年だったので。もしその場で優勝できたとしても、自分の成績が伴っていないので、素直には喜べなかったと思います」
現在は再び2軍で調整中だが、自身の課題と向き合い、実りある日々を過ごす。動作解析を受け、「右腰が先に開いてしまう」という癖も再認識し、試合では鋭い打球が増えてきた。「継続して良いコンタクトができるように意識していきます」と前を向く。「今年こそ優勝の瞬間を1軍で」――。未完の大器がチームを救う日は、必ずやってくる。
(森大樹 / Daiki Mori)