松山2軍監督も打撃面の変化を評価「続けること」
次はない。覚悟を胸に決断した。育成の山下恭吾内野手がウエスタン・リーグで打率.435と好調を維持している。「自分の意見を貫き通した」と振り返るのは、春先の出来事だ。
22日のオリックス戦(ほっともっと神戸)に「2番・遊撃」でスタメン出場した。1回、3回、7回と3本の左前打を放ち、猛打賞を記録。「甘い球に対して、積極的にアプローチができました」と振り返った。松山秀明2軍監督も「試合に出て結果を出すのは、1日だけではいけない。続けることです」と期待を込める。2025年シーズン中に2桁の背番号を掴むことはできなかったが、今後のためにも自分だけの形を必死に作ろうとしている。
4月下旬、試合前のシートノックでの出来事だった。打球を処理しようとした際、激痛が走った。診断は右人差し指の骨折。病院の一室で医師が示したレントゲン写真には、無情な現実が写し出されていた。
レントゲン画像を見ながら…医師から告げられたのは
「開幕してからずっと2軍でやらせてもらっていた中、怪我をしてしまった。自分の中でももったいないし、悔しかったので。なるべく早く戻れるようにと思って、保存療法を選びました」
同じ箇所の骨折は2度目だった。医師からは手術を勧められたが、首を横に振った。「メスを入れたら、保存療法よりも復帰が1か月くらい遅くなってしまうので」。7月末が支配下登録の期限。リハビリに時間を費やしている余裕はない。脳裏には焦りと葛藤が渦巻いたが、覚悟はすぐに決まった。
「また次、同じところが折れたら絶対に手術しないといけないから『今のうちにしておいた方がいいんじゃないか』って言われたんですけど、自分の意見を貫き通した感じです。『3回目はないからね』と言われました。(決断を)お医者さんも、受け入れてくれた感じでした」
生活にも大きな支障が出た。まともに箸を持つこともできず「中指と薬指を使っていました」と、もどかしい日々を過ごした。支えてくれたのは、中谷将大リハビリ担当コーチ(野手)。「最初の方は落ち込んでいたんですけど、よく『復帰した後の話』をしてくれたんです。選手目線で話してくれるので、モチベーションを高く保つことができました」と前を向き続けてきた。
リハビリ期間中を支えてくれた身近な存在
復帰後はウエスタン・リーグで13試合に出場して打率.435。「打つべきボールを打てている感覚があります。積極的に早いカウントからいく中で、甘いところにきたらしっかりと捉えられています」と好調の要因を自己分析する。この日のオリックス戦、9回2死の第5打席では四球を選んだ。ファウルにはなったが3ボールからスイングを仕掛けるなど「全部打ちにいくんですけど、難しい球は見極めながら。その意識がいい結果につながっています」と胸を張った。
8月12日からは、2軍に合流した今宮健太内野手とともにプレーした。打撃練習する姿に目を凝らしていた。「健太さんは、自分も同じタイプだと思う。ボールに対してのバットの入れ方だとか、練習からどっち方向を意識して打っているとか。そういうところはヒントになると思うので、吸収できればと思って見ていました」。右投げ右打ちの内野手という共通点。球界を代表する名手のように、全ての面で成長を遂げていきたい。
「今年は支配下になれなかったんですけど、そこは引きずらずに。また来年に繋げられるように、後半戦頑張りたいなと思います」。医師の勧めに背を向けて、自らが選んだ道を歩んだ。後悔しないために、一瞬一瞬を全力でプレーする。
(竹村岳 / Gaku Takemura)