一度ベンチに退くもプレー続行
劇的なサヨナラ勝ちを収めた17日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。その勝利の裏には、アクシデントに見舞われながらも闘志を見せ続けた男の姿があった。
この試合に「9番・遊撃」で出場した川瀬晃内野手は8回に右ふくらはぎに死球を受け、グラウンドにうずくまって悶絶。治療のため一度ベンチへ退いた。スタンドから「頑張れ川瀬!」の声援が響く中、ベンチではどのようなやり取りがあったのか。
結局、代走は送られることなく川瀬はグラウンドに立ち続けた。開幕から一度も離脱することなくチームを支え続けてきた27歳を襲ったアクシデントに、首脳陣も肝を冷やした死球。その後も痛みに耐えながら出場を続けた背番号0だったが、心配無用と言わんばかりの”無言のアピール”がそこにはあった。
交代を決断させなかった振る舞い
「あれが、足を引きずるような仕草で(守備位置に)行ってたら代えていたと思うよ。きっと痛かったんだと思う。だけど、やっぱりプロだなと思う」
奈良原浩ヘッドコーチが見ていたのは、9回の守備に就く川瀬の様子だった。言葉だけで測れないのが選手の“本当の状態”。痛みを隠してプレーを続行しようとする選手は少なくない。首脳陣が交代も視野に入れる中、川瀬は普段通りいち早くグラウンドに飛び出し、自らの足取りで「大丈夫だ」と証明してみせた。
死球を受けた直後のベンチでの様子を、奈良原ヘッドはこう振り返る。「本人に『どうだ?』と聞いたら、『大丈夫です、気合でいきます!』と言ってました」。これ以上の怪我人を増やすわけにはいかない。この先の戦いを考えれば、大事を取りたい場面だったが、川瀬の強い意志があった。
「(ふくらはぎを)圧迫して。それでいけるっていう判断をしました」。ベンチ裏での応急処置を行い、グラウンドに現れた川瀬。9回の守備ではゴロをさばいたが、送球後には一瞬、痛む素振りも見せた。それでもすぐに普段と変わらない様子で外野手との連係確認を行うなど、気丈に振る舞った。
「とにかく冷やします。当たったところはもう大丈夫だと思います」。試合後、すぐに次の試合に視線を向けた川瀬。痛みに顔を歪めながらも、チームのために戦う姿は、見るものに勇気を与えた。優勝争いが激化していく中、27歳が見せた背中がチームを高みへと導く力になる。
(飯田航平 / Kohei Iida)