【連載・前田悠伍】20歳になった瞬間の“驚きの行動” 千賀も唸った“達観ぶり”の原点

20歳を迎えて記念撮影に応じる前田悠伍【写真:竹村岳】
20歳を迎えて記念撮影に応じる前田悠伍【写真:竹村岳】

誕生日は本拠地で投手練習に参加「これから頑張りたい」

 人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」。前田悠伍投手の8月編をお届けします。4日に誕生日を迎えた左腕。20歳になった瞬間は、どんな過ごし方をしていたのでしょうか? 自主トレをともにしたメッツ・千賀滉大投手ですら驚く“達観ぶり”。そのルーツに迫りました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 記念すべき20歳の誕生日は、みずほPayPayドームでの投手練習だった。翌5日にはロッテ戦の先発登板を控えていた。「何もしていないので、あんまり変わったことはないですね。これからしっかり頑張っていきたいと思います」と口数は多くなかった。自身の節目よりもチームの勝利。まだまだアピールが必要な立場だからこそ、集中した雰囲気が伝わってきた。

 3日の夜から4日の午前0時にかけて、“20歳になった瞬間”は、何をしていたのか。「まだ起きていましたよ」。その過ごし方にも、前田悠らしいプロ意識がにじんでいた。

家族から届いた連絡「またここから頑張って」

「確か、データを見ていましたね」。先発予定だったロッテ戦に向けて、相手バッターの特徴を頭に叩き込んでいるところだった。厳密に言えば「(日付が変わった瞬間は)ちょっと映像を止めていたんですけど、そこからまた見て、寝ましたね」。特別な感情になるよりも目の前の試合が重要だった。「試合が遠かったら『ハタチか』とか思ったかもしれないですけど。データを見ていたので『そっか、きょう誕生日か』みたいな感じでした」と笑顔で振り返った。

「もちろん、喜びましたけどね」。1つの節目となる年齢を迎えて、より背筋は伸びた。「お酒も飲んでよくなる。自分をしっかりと持って行動したり、発言したりしないといけないなと思います」。家族から祝福の連絡も届いた。「『おめでとう。またここから頑張って』と言われました」と明かした。

常に周囲の目線を意識した3年間「自然とそうなった」

 自主トレをともにした千賀は、前田悠の印象について「現状を俯瞰することができる。あの若さでできるのは、ちょっとすごいなと思います。今に囚われずに、もっとその先を見ることができる。不思議な人だなと思いました」と語っていた。メジャーでも屈指の右腕ですら、驚きを隠せなかった“達観ぶり”。そのルーツは、大阪桐蔭高時代にある。

「高校の時にそういう環境にいて、自然とそうなっていったんだと思いますね。高校の3年間はめちゃくちゃキツかったですけど、今思えばあそこで人間的にも、もちろん野球でも成長ができたと思います」

 春夏合わせ9度の甲子園優勝を誇る名門。チームの勝敗が大きな注目を浴びる。自身も入学直後からメディア取材を受けるなど、ドラフト上位候補として常に“周囲の目”を意識してきた。「逆に高校の時の方が、変な行動をしたら終わってしまう。(万が一、何かを起こしてしまえば)チームが公式戦に出られなくなる、とかもあるじゃないですか。3年間でそういう経験ができたのは大きかったですね」。エースも主将も経験した3年間、どんな時も周囲が自分を支えてくれた。感謝の思いが、前田悠伍の原動力だ。

「あとは千賀さん、今永(昇太)さんとお会いしたことですね。世界のレベルを見ることができてまだまだだと思いましたし。人間的にも、おふたりは素晴らしかったので。まだまだ自分なんか中学生だなというか、そういう気持ちになれたことでまた1つ変われたんだと思います」。謙虚で純粋。どれだけ年齢を重ねても、原点はきっと変わらない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)