中村晃は「特別な存在」 適時打直後、牧原大成が掲げた拳…2人に通じる“執念”

ヒーローインタビューに応える中村晃【写真:荒川祐史】
ヒーローインタビューに応える中村晃【写真:荒川祐史】

7回に中村晃がタイムリー…牧原大成が喜びを爆発させたワケ

 黙々と準備を続ける姿を、一番隣で見守ってきた。「僕は晃さんと一緒にチームを引っ張っていかないといけないので」。特別な感情でともに拳を掲げたのは、中村晃外野手と牧原大成内野手だ。

 11日に行われた日本ハム戦(みずほPayPayドーム)、球場が大歓声に包まれたのは2-1で迎えた7回だった。2死一、二塁のチャンスで中村が代打で登場。玉井のフォークを左前に運び、リードを2点に広げた。フルカウントからの6球目を仕留め、「打った球もボールか、ストライクいっぱいのところだった。しっかりと集中して、いい打席だったのかなと思います」と頷いた。

代打で適時打を放った中村晃【動画:パーソル パリーグTV】

 勝利にグッと近づく貴重な一打に、ベンチも総立ち。自分のことのように手を叩いていたのが、牧原大だ。「誰が打っても喜びますよ」。そう照れ笑いしたが、いつもウオーミングアップから一緒に準備を始める2人。妥協なき姿勢は、お互いが必ず見守っている。中村も、穏やかな口調で後輩への思いを口にした。

8月以降のスタメン起用は1度だけ…中村晃の胸中は?

「牧原もしっかりと結果を出せていますし、僕もみんなに負けないように頑張りたいなと思いますけど。(準備の姿勢は)当たり前のことだと思うので、これからもやっていくだけですね」

 ライバルとの首位攻防3連戦で3連勝。日本ハムとのゲーム差を「4」に広げた。1軍最年長の35歳も「後半になるにつれて、1試合の勝敗が重くなっていくので。3連勝は大きいと思います」と目を細めた。8月に入ってスタメン起用は1度だけ。「チーム状況がいいですからね」。出番を待つ日々が続くが、必ず大きなチャンスは来ると信じて、黙々と準備を続けている。

 春先から次々と主力が負傷した今シーズン。中村と牧原大は離脱することなく、チームのために身を粉にしてきた。プロ15年目を迎えている背番号8も「僕は晃さんとともにチームを引っ張っていかなくちゃいけないと思っているので。お互いにああしろこうしろ言うタイプではないし、姿で見せていきたい。そういう意味では特別な存在です」と言い切る。後輩たちも多くなってきた中でも「晃さんがいるから自分も頑張れるっていう面は確かにあります」。偽りのない本音で、改めて信頼を寄せた。

ヒーローインタビューを終えた中村晃に拍手する牧原大成【写真:荒川祐史】
ヒーローインタビューを終えた中村晃に拍手する牧原大成【写真:荒川祐史】

中村晃が牧原大成の“信念”を感じたプレー

「価値観は似ていると思いますね」。牧原大に対して、中村がそう口にしたことがあった。アウトとコールされるまで諦めず、全力疾走を怠らない。どんな展開であろうと絶対に手を抜かない2人には、共通した“信念”が生まれるようになった。象徴的だったのは、7月15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)だ。

 牧原大は二塁でスタメン起用され、10-2となった8回から中堅に回った。2死から藤岡が放った打球が左中間を襲う。惜しくも届かなかったが、背番号8はダイビングキャッチを試みた。「8点をリードした8回2死」でも、一球に全てをかけてプレーする。そんな姿には中村も「点差があるからといって8割で追いかけたりしない。捕れはしなかったけど、ああいうところがあいつの凄さじゃないですか」と語っていた。

 投手がピンチとなれば、すぐに駆け寄って声をかける。牧原大が見せる1つ1つの行動からは、強いリーダーシップが伝わってくるようになった。「こんな緊迫した戦いを味わっている若い選手は少ないと思う。こうしろ、ああしろって直接言うよりは、僕や晃さんみたいな上の人間が全力でプレーすることで、引っ張っていかないといけない。それを若手が見てどう思うか、じゃないですか」。残り40試合、先頭に立ちながらこのまま一気にゴールテープを切る。

 背番号7にとって、代打で放った安打は今季2本目となった。自身の適時打に、ナインがベンチから飛び出して喜んでいた。一塁上でガッツポーズしながら目にした“景色”に「個人的にもいい仕事をしたなって感覚があったので。嬉しかったですね」と冷静に振り返った。中村晃と、牧原大成。応援してくれるファンのために、戦う姿勢を見せ続ける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)