大山凌の“異変”…負担に気づいた明確な瞬間 登録抹消の裏側、小久保監督「俺からの提案」

筑後のファーム施設で練習する大山凌【写真:竹村岳】
筑後のファーム施設で練習する大山凌【写真:竹村岳】

今季は開幕から1軍入りして26試合に登板

 指揮官の「提案」を真摯に受け止めた。監督室で伝えられた課題と、感じた思い。チームの勝利に貢献するため、自らに必要なことを見つめなおすための時間を惜しむつもりはない。

 大山凌投手が3日に出場選手登録を抹消された。今季は開幕1軍入りを果たし、26試合に登板して防御率2.35。1勝1敗1セーブ3ホールドと、さまざまな起用に応えてきた。6月11日の巨人戦(みずほPayPayドーム)から9試合連続無失点。託されるシチュエーションの変化に、首脳陣の信頼が表れていることは右腕も感じ取っていた。

「投げていても気持ち悪かったので……」。包み隠すことなく直近の状態を自己分析する。7月31日の日本ハム戦(エスコンフィールド)では2点リードの7回に登板し、1回無失点に抑えたが「映像で見てもストライクが入っていなかったですし、いろんな要素に助けられました」。首脳陣が下した登録抹消という判断。右腕は再調整が決まった経緯を明かした。

小久保監督もキッパリ「絶対に必要な戦力」

「抹消って言われた時に、(小久保裕紀)監督に呼ばれて直接そういう話をもらった。『これは俺からの提案で言わせてもらっている』っていうふうに。そういうふうに考えてくれているんだなと。すごくありがたいですけどね」

 3日の楽天戦(みずほPayPayドーム)、試合前練習を終えると首脳陣に呼び出され、登録抹消が決まった。自身の異変を明確に感じたのは7月17日のロッテ戦(北九州)。2番手としてマウンドに上がったが、雨天の影響で1時間5分の中断もあり、心身ともにハードな登板となった。「そこからちょっとズレている感じがしました。結構負担がかかっていたみたいです」。知らず知らずのうちに溜まっていた疲労は、隠し通すことができないところまで来ていた。

「実際にこの間のエスコンでも、ストレートでストライクが取れていなかった。何が原因なのか、疲れなのか、どこから来ているものなのか。(監督に呼ばれた時は)倉野コーチとも話しながら『もう詳しいところはお前に任せるから』って。後半戦、ここから(の戦いに向かう)にあたって『絶対に必要だから』と言ってもらいました。なるべく早く対処するために、抹消させてもらうっていう話になったんです」

 小久保監督も「左バッターへのストレートが抜けすぎていたので、修正をかけた方がいい」と説明した。時間を与えることで、この先に待つ厳しい戦いに向けて備えてもらうつもりだ。「2軍は9連戦もありますし、試合で投げられる状態にしてきてほしい。絶対に必要な戦力なので」。ハッキリと言い切った口調から、大山に対する信頼が感じ取れた。

2軍に合流して再調整へ…意識するのは「メリハリ」

 首脳陣の思いは、右腕にもしっかりと伝わっている。「抹消されて『うわあ……』とかはないです」。プロ2年目で長いシーズンを乗り越えていく難しさを改めて感じる出来事にもなった。「僕的には『もう8月か』っていう感じだったんですけど。積み重なったものが(体に)きたのはあると思います」。2軍にいる期間はできるだけ短くして、すぐに“最前線”へと復帰していきたい。

「(今後意識するのは)メリハリですね。やりながら休もうとかじゃなくて、練習するなら練習をちゃんと集中してやって、また休みを挟む。試合が始まったらしっかり投げられる準備をしていく。そんな感じで強弱をつけてやった方がいいかなと思っています」

 勝負の秋、必ずマウンドに立つ。今のホークスにはもう、大山凌が欠かせない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)