宮崎颯が我に返った言葉 「当たっていけ」を自分流に“変換”…「自分のケツは自分で」

宮崎颯【写真:矢口亨】
宮崎颯【写真:矢口亨】

マウンドでかけられた“言葉”で取り戻す姿

 絶体絶命の場面でも気持ちだけは負けなかった。5日のロッテ戦(ZOZOマリンスタジアム)、3点ビハインドの8回にマウンドへ上がったのが宮崎颯投手だ。この日が支配下登録後、2試合目の登板。初登板となった8月3日の楽天戦(みずほPayPayドーム)では安打を許しながらも後続を併殺で切り抜け、無失点デビューを飾っていた左腕。この日こそ打者3人でぴしゃりと抑え、9回の攻撃に勢いをつけたかったが、そう甘くはなかった。

 マウンドに上がった宮崎は、いきなり連打を浴びた。さらに送りバントの処理では、自らの悪送球で無死満塁のピンチを招いた。このまま崩れてしまうのか――。そう思われた中で、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)がマウンドへ歩み寄った。この時の言葉が、左腕の投球を劇的に変えた。

「腹をくくれ」で奮い立った闘争心

「ここは腹をくくるしかない。もう全力で打者に当たっていけ」

 マウンド上で倉野コーチからかけられた言葉はシンプルだった。「本当にその通りだなと思いました」。宮崎は瞬時に迷いを振り払った。ピンチで周りが見えなくなりかけていたが、この一言で持ち前の闘争心に再び火が付いた。

「当たっていけ」という言葉を宮崎なりに“変換”した。「スイッチは入っていましたけど、より一層、もう一歩『噛みつきにいく』という気持ちになりました。2軍の時からそういう風に投げていたので、その時と同じように」。支配下登録前のがむしゃらな気持ちを思い起こした。忘れていたわけではないが、1軍のプレッシャーの中ではさらに自らを奮い立たせる必要があった。倉野コーチの言葉は、今季2軍で“無双”していた姿を取り戻すためのきっかけとなった。

 無死満塁から打者の宮崎を遊直に打ち取ると、藤原と寺地を連続三振に斬って取り、このピンチを無失点で切り抜けた。「あの場面は一人ひとりを全力で抑えるしかないので。自分のケツは自分で拭くっていう強い気持ちを持てました」。持ち前の気迫が前面に押し出された投球だった。

■ピンチ招いた反省と得た収穫…「二度とないように」

 試合後、宮崎は倉野コーチから「反省するところはするけど、1軍はゼロで抑えることが大切だから」と声をかけられたという。自身でピンチを招いた登板となったが、結果的に無失点に抑えたことは大きな収穫だ。

「今日の反省をしっかりして、次に二度と同じミスがないようにしていきたい」。宮崎は力強く前を向く。この経験を糧にできるのが、左腕の強みだ。それこそが1軍で生き抜く道だと、誰よりも理解している。

(飯田航平 / Kohei Iida)