役割は「先発も中継ぎも」
マウンドで見せる表情に、復活への期待が膨らむ。右肘のトミー・ジョン手術からの1軍復帰を目指す武田翔太投手が3日、ウエスタン・広島戦(由宇)で先発のマウンドに上がった。「本当に久々だったので、少し緊張しました」。この日は3回を投げて1失点。復活への確かな一歩を刻んだ右腕は試合後、安堵の表情とともに現在の心境を明かした。
6月7日の4軍戦で実戦復帰を果たしてから約2か月。この日に至るまで、3軍で若い選手たちと共に汗を流してきた。苦しいリハビリに、これまで経験したことのない過酷な環境--。ベテランが見据えるシーズン残り2か月の戦い。本人が明かした思いと、首脳陣が描く今後の展望とは。
安堵の裏にある“もどかしさ”
「結果はあれですけど、まずは投げられてよかったかなと」。今季初の2軍戦登板を終え、武田はホッとした表情を見せた。その一方で、冷静に課題を口にすることも忘れない。
試合中にはボールが指に引っかかる場面も見られた。これは手術の影響で肘に“硬さ”が残り、伸びきらない状態であるためだ。「そこはもう少し時間がかかるなと。それが取れるまでは付き合いながらという感じですね」。多少のもどかしさを抱えながらも、自身の体と向き合い、着実に前進を続けている。
3軍での調整期間中には、若手選手らとともにバスでの長距離移動も経験した。最も長い移動時間は9時間に及んだというが、「逆に楽しんでましたけどね。いい刺激をもらえたと思います」。これまでのキャリアでは得られなかった時間をポジティブに捉える。
「積極的に質問に来る子もいましたけど、自分からはあまり(若手の元には)行きませんでしたね。年齢が10個くらい違うので、おじさんはちょっと黙っておかないと」。そう言って背番号18は笑顔を浮かべた。
首脳陣が描く残り2か月のプラン
シーズンも残り2か月を切り、終盤戦へと差し掛かる。「先発のイメージではやっています。先発をやっておけば中継ぎでも入れるので」と、柔軟な姿勢を見せる32歳。「これからはしっかり『投げられるよ』というのを見せていかないといけない。投げられるならどこでもいいです」。その言葉には、再び1軍のマウンドを目指す強い思いがにじむ。
この日の投球を見守った小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)は、まず右肘に異常がなかったことに胸をなでおろした。「無事に投げられたことが一番の収穫ですね。あれくらいの投手なので、特にこっちから『ああしてくれ、こうしてくれ』っていうことは一切言わずに、確認だけしました」。武田からも様々な反省点が挙がったというが、そこは本人の感覚に全幅の信頼を置いている。
今後は2軍に帯同し、1軍復帰を目指していく。この日は押し出しの四球で1点を与えたが、小笠原コーチは、「楽しそうに投げてましたよね。それが良かったです」と、マウンドで見せた右腕のいきいきとした表情を評価した。
「もっと真っすぐの精度が上がっていけば、全然(1軍に)いけるんじゃないすか。今後が楽しみです」と小笠原コーチは頷く。長いリハビリ期間を経て、これからは結果を出せばかつての居場所にもどれるところにまでたどり着いた。強い意志と首脳陣からの期待を背に、背番号18は1軍のマウンドを見据えている。
(飯田航平 / Kohei Iida)