牧原大成に「助けられた」 感謝と謝罪、試合中の“熱”…大関友久が語る野手陣の存在

牧原大成と大関友久【写真:栗木一考】
牧原大成と大関友久【写真:栗木一考】

「すまん――」。自身と同じく育成から這い上がった先輩からの一言は、左腕を奮い立たせるには十分すぎた。「助けられた気持ちになりました」。そう語ったのは、3日の楽天戦(みずほPayPayドーム)でキャリアハイの9勝目を挙げた大関友久投手だ。

 抜群の安定感は相変わらずだった。3回に自身の失策も絡んで失点したものの、被安打はわずか1本。7回1失点(自責0)と試合を作ってみせた。5月から続いている自身の連勝を「7」に伸ばし、防御率1.53は同僚のリバン・モイネロ投手に次いでリーグ2位の成績だ。小久保裕紀監督は有原航平投手を含め、「今はその3人が柱です」と最大級の賛辞を贈った。

「イーグルス打線は、三振しないようなバッティングをする選手が多い。あまり三振が取れていないことを深く考えるよりは、しっかりゾーンに投げて『これでいい』という気持ちでした」。打たせて取る投球が光った中、ビッグプレーが飛び出したのは5回2死一塁だ。一、二塁間の打球を牧原大成内野手が横っ飛びで処理。ピンチの芽を摘んだ後、感謝と謝罪が交錯したやり取りがあったという。

大関友久も感謝した場面「あれが抜けていたら…」

「牧原さんがエラーされた時は『すまん』って言ってもらいましたし、ファインプレーしてもらった時は(自分から)ハイタッチに行きましたね。『ありがとうございます』って。あれが抜けてライト前ヒットになっていたら、相当大きい場面になっていたと思いますし。助けられたなっていう気持ちはすごくありました」

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 2回、辰己が放った打球をグラブに収めきれずに失策を喫していた32歳。自身のミスを“帳消し”にするようなビッグプレーにも、牧原大は首を横に振る。「エラーをしているので一緒です。いいプレーをしても、ピッチャーに迷惑をかけてしまったのは変わらないので」。二塁手として今季4失策目。持ち味である守備面で綻びを見せてしまったことが悔しかった。その後、バットでは2本の三塁打を放ち、2打点をマーク。「しっかりと自分の仕事をしていきたいです」と小さく頷いた。

5回にはマウンドで嶺井と会話「お互いに熱く…」

 守ってくれるバックとのやり取りは、他にもあった。5月以降、大関とバッテリーを組んでいるのは嶺井博希捕手。マスク越しに見たこの日の投球について「よかったんじゃないですか。相手がいることではあるんですけど、うまくいっている試合が続いていますよね」と手を叩く。27歳左腕とのコンビ。「本人がいつもやることを明確にしているので。そこに対して、(一緒に)取り組んでいくことに集中しています」。心掛けていること明かした。

 5回2死、小深田に対して四球を与えると、すかさず嶺井がマウンドに向かった。交わしたのは一言ではない。大関は「間(ま)を作ってくれた感じです。『次のバッターをどう攻めようか』『しっかりと強気で勝負していきます』という相談もしながら」。会話の内容を振り返る中で「試合中ですし、お互いにちょっと熱くなっていましたね。試合に入り込んでいました」とも付け加えた。マウンドで果たすべき仕事は明確にしつつ、バッターに向かっていく姿勢は絶対に忘れない。心の面でも“強弱”を付けられていることが、今の結果に結びついている1つの要因だろう。

 9勝目を挙げ、チームの中心的存在となってきた背番号47。野手陣の思いまで背負ってマウンドに立っているのかと思えば、しっかりと足元を見つめていた。「そういうふうに見ていただけるのは嬉しいことですけど。自分の投球をする中で、いろんなことが起きるだけ。もちろんエラーが出ることもありますけど、ファインプレーで助けてもらう時もあるので」。野手と持ちつ持たれつの関係性であることは深く理解している。「自分がやるべきこと」に対して、どんな場面でもフォーカスするのが大関らしさだ。

シーズンの個人目標は「13勝と160イニング」

「13勝、160イニングという数字を目標にしている。そこも、結果として繋がっていくような投球をしていく。『13勝しよう』と思って投げるというよりは、中身の部分です。どういう投球をすれば、そういうところにたどり着けるか。やるべきことに集中して、次の登板も同じような気持ちでいけたらいいなと思います」

 3つ目のアウトを奪うと、野手を称えるために必ずハイタッチに行く。降板後はベンチの先頭に立ち、声を枯らしてナインを応援する。結果はもちろん、チームのためを思う健気な姿勢を貫いてきた。登板を重ねるごとに、高まる信頼度。野手陣を心から信じる大関友久ならきっと、どんな目標でも叶えていける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)