2日の楽天戦では3者連続三振の好投
打者を圧倒する本来の姿を取り戻しつつある。実は以前から、首脳陣は「反攻のキーマン」に挙げていた。ホークスが誇る“3本の矢”に続く存在として、期待されるのがダーウィンゾン・ヘルナンデス投手だ。
1日から始まった楽天戦(みずほPayPayドーム)は、見事に3連勝を飾った。2日の第2戦、事実上の守護神を託されている杉山一樹投手が連投していたことを考慮され、ベンチから外れた。2点をリードした7回、先発・有原航平投手からバトンを受け継ぐ形でマウンドに上がったのが、ヘルナンデスだ。小深田、中島、小郷と3人の左打者から3奪三振。隙すら与えずにゼロを並べ、チームの勝利に貢献した。
昨シーズンは48試合に登板して防御率2.25。48イニングで72三振を奪い、ブルペンの一角としてリーグ優勝に貢献した。しかし、新たに2年契約を結んだ今季は春先からつまづいた。4月を終えた時点で防御率9.45。5月には左太ももを痛めて登録抹消されるなど、苦難の道が続いた。シーズンは8月に突入し、左腕も本来の姿を取り戻している。狙い続けたチャンスが今、訪れようとしていた。
倉野コーチが明かしていた後半戦の起用プラン
「自分としては、絶対にいいタイミングが来ることはわかっていました。それをずっと待って、いろんな準備もしてきましたし、結果に結びついているのかなと思います。いいことだけを考えて、悪いことは捨てる。例えば防御率が下がらない、打たれてしまう、調子が上がらない……。そういう部分はもう考えず、ポジティブなことにフォーカスしてやってきたから、今があるのかなと」
ベネズエラ出身の左腕。リハビリ組にいた時、同学年の栗原陵矢内野手から「なんでそんなに落ち込まへんの?」と聞かれたことがあるほどだ。「いい時はもちろん、自分が悪い時にどうなるかを知っておくこと。うまくいかない時も当然ありますけど、チームメートと冗談を言ったり、明るく振る舞うことを大切にしています。野球は失敗も多いし、サポートしてくれる人はたくさんいる。周囲からどう見られているのか、自分もわかっていますから」と具体的に続けた。
自身を“投げたがり”だと認めるヘルナンデス。手に汗握るような状況でマウンドに向かうことを待ち望んできた。「今は彼ら(藤井皓哉、松本裕樹、杉山一樹)が最高のタイミング。チームとしてもそれを逃してはいけないし、投げさせないといけない。でも必ず自分たちにも重要な瞬間が来る。そこで仕事ができるようにと思いながらやってきました」。ここからもっとチームに貢献する。プレッシャーを感じる場面こそ、左腕の力が発揮されるはずだ。
チームは前半戦を2位で終えた。故障者が相次いだ中でも上位進出を果たせたのは、勝ちパターンを任される藤井、松本裕、杉山の存在が大きかっただろう。日本ハムを2ゲーム差で追うという状況で突入した後半戦。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は“3本の矢”を踏まえ、バックアップの存在が大切になると予見していた。
「確かに前半戦を支えてくれた3人は、本当に信頼度が高いです。ただそこに頼り切った戦いをしていると、やっぱり持たなくなってしまうので。代わる代わるといいますか、そういうふうに使っていけるような投手陣にしたいとは思っています」
さらに厳しい戦いが待ち受けている。そこで最高のパフォーマンスを発揮してもらうためにも、ブルペンの「厚み」を生かして夏場を乗り越えていかないといけない。倉野コーチは「ヘルナンデスもそうですけど、津森(宥紀)もいますし。今いる中継ぎのメンバーを7回、8回でも信頼して送り出せるようにしたいです」。具体名を挙げながら、今後の戦いを見据えていた。若鷹の成長はもちろん、背番号63の復調は必ずこの先のチームを支えるはずだ。
小久保監督も信頼「厚みは増すかな」
2日の楽天戦。試合後に小久保裕紀監督は「杉山はきのう(1日)の試合後に監督室に呼んで『あしたはリフレッシュ』と伝えました」とベンチから外した理由を明かした。3点差の接戦を制した一戦。「ヘルナンデスは連投になりましたけど、9月の戦いを見据えた時に彼の力は必要なので。これくらいのピッチングをしてくれると、ちょっと厚みは増すかなと思います」。頼もしすぎる“一枚”が首脳陣の計算に加わったことは、大きなプラス材料になる。
「僕の仕事は2つあります。マウンドで仕事を果たすことと、家に帰ってパパをすることです」。ヘルナンデスは笑顔でドームを後にした。とにかく投げまくることで、リーグ連覇という目標に貢献していきたい。
(竹村岳 / Gaku Takemura)