西田哲朗広報にとっても「貴重な経験に」
7月22日、23日に「マイナビオールスターゲーム2025」が行われました。ホークスからはリバン・モイネロ投手、杉山一樹投手、周東佑京内野手、山川穂高内野手、野村勇内野手、柳町達外野手の計6選手が参加。スタッフとして同行した西田哲朗広報が裏話を明かしてくれました。試合中にグラウンドの選手と放送席をマイクで繋ぐという試みには、どんな経緯があったのでしょうか? 忘れられないスリーショットが実現した舞台裏とは--。
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オールスターは前年のリーグ1位、2位チームの広報が「オフィシャル」という位置付けになるんです。2024年、ホークスはリーグ優勝しましたから、1位として球宴に行くのは僕にとっても初めてでした。レギュラーシーズンとはまた違った大変さがありましたね。他球団の広報さんもいらっしゃるので。
例えば先発オーダーを決めたガラポンの映像を撮っている時も「ここまでは映せない」とか。スタメン発表の時間もあるので、配信するタイミングもいろんな方と打ち合わせして、まとめないといけなかったです。チームを超えた広報同士のやり取りがあるので、それは新鮮でした。いつも以上にやること、考えることが多かった。だからこそ得るものもあって、自分としてもすごく貴重な経験となりました。
今回のオールスターでは、試合中に選手がマイクを装着するという試みをやってみました。どういう経緯だったかというと、実は驚くくらい“シナリオ通り”に進んでいったんです。
西田広報も思わず「面白い」と思った発案とは
まずは、テレビ朝日さんが「そういう企画をやります」と。初めは(マイクをつけるのが)守備だけだったんですけど「攻撃はどうですか」となって、僕も面白いなと思いました。(打ち合わせの段階で)盗塁の話になったんですよね。当然、周東選手についてです。一塁上でリードしているところで、放送席と繋いでもらう。キャッチャーも昨年までチームメートだった甲斐(拓也)選手がセ・リーグにいましたから。走る、走らないというところで心境を話してもらえたら、より野球の魅力をファンの方々に届けられる。周東選手への伝え方としては「こういう一面を見せていきたいから、この企画ちょっとやってみようか」っていう話をしました。
当然、そんな簡単にいくとは思っていません。まずヒットを打つことが条件になるし、盗塁も成功しないといけない。テレビの番組には“尺”があって、マイクも試合中ずっとつけているわけではないので、難しいのはわかっていました。
実際にマイクを装着したのは第1戦の2打席目。ピンポイントでトライしたんですけど、周東選手はしっかりとレフト前ヒットを打ってくれた。そこから二盗、三盗も決めて、新庄(剛志)監督との“あの絡み”も生まれた。新庄監督といえば(現役時代に球宴で披露した)ホームスチールですし、「やってみるか」っていう会話もマイクをつけているからこそ音声を拾うことができたので。こちらとしては思い描いていたシナリオが、100点どころか120点になりましたよ。試合中の“生の声”を届けるのも、今までになかったことですから。
周東佑京&甲斐拓也とのスリーショットはなぜ生まれた?
甲斐選手、周東選手とスリーショットを撮ることになったのも、理由があります。第1戦に盗塁をめぐる2人のやり取りがあったから、翌日の第2戦に中継ゲストで呼ばれたんです。
それが終わって、せっかくの機会やから写真を撮ろうかっていう話をしたんです。そしたらテレビ朝日の方が「3人で一緒に撮りましょうよ」と言ってくれて。仕事中ですし、僕は遠慮しようかなと思ったんですけど。甲斐が「冷たくなりましたね! 僕がいなくなったから!」みたいな感じで言ってきたので、「それはもちろん。冷たくなるでしょ」って冗談も言いながら撮らせていただきました(笑)。ヒットを打つのも難しいと思っていたところから、全てがシナリオ通りに進んだことで、この写真も生まれたんです。選手会長の表情もめちゃくちゃよかったですね。
モイネロが披露した右投げ…事前に「投げる」と聞いていた
もう1つのトピックといえば、モイネロ投手が披露した右投げでしょうか。あれも本気でやっていますからね。彼は両打ちでもありますし、なんでもできるという意味では新しいプロモーションができたかなと思っています。大きく取り扱っていただきましたから。
これに関しては、実は少し心配でした。事前に右で投げるというのは聞いていたんですけど、怖いのは怪我。ピッチャー返しとかも、試合である以上は可能性があるワケじゃないですか。でも、何よりも本人が粋に感じて「やりたい」って言っていたので。簡単にツーアウトを取って、ランナーなしだからこそできたこと。それほど身体能力が高いという一面も、お届けできたんじゃないでしょうか。
感謝したいのは企画を構成してくれたテレビ朝日さんです。盗塁1つにしても、これだけ駆け引きがあるっていうリアリティを見せることができた。オールスター休みはずっと仕事をしていたことになりますけど、ありがたい疲れです。後半戦も、選手の姿をファンの方々に届けていけるように。僕も日本一のワンピースになれるように、頑張っていきます。
(竹村岳 / Gaku Takemura)