小久保監督から“粋”なプレゼント 言動で示した感謝…ぎっしり詰まった「うなぎ」

ジーター・ダウンズと握手する小久保裕紀監督【写真:小林靖】
ジーター・ダウンズと握手する小久保裕紀監督【写真:小林靖】

ナインから「ありがとうございます」と聞こえてきた理由

 リーグ連覇に向け、最高のスタートを切った。ここから先の戦いこそ、より一丸になることが重要だと誰よりも理解している。ソフトバンクは26日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)に11-3で快勝。「後半戦の初戦。最初が肝心なので」と声を弾ませた小久保裕紀監督は、試合前からナインに言葉と行動で“魔法”をかけていた。

 先発の有原航平投手が3回に2点を失い、先制点を献上した。5回までゼロ行進だった打線が目覚めたのが6回だった。佐藤直樹外野手の3号ソロで反撃ののろしを上げると、なお好機で柳町達外野手が放った右中間への一打で逆転に成功。8回には一挙7得点を奪い、「後半戦の初戦」を白星で飾った。首位・日本ハムを2ゲーム差で追う立場。「こちらも負けないようについていきます」。指揮官は大勝にも表情を引き締めていた。

試合前に嶺井博希と握手する小久保裕紀監督【写真:小林靖】
試合前に嶺井博希と握手する小久保裕紀監督【写真:小林靖】

 この日の試合前、小久保監督は選手、スタッフの1人1人と丁寧に握手を交わしていた。より厳しい戦いが待っているからこそ、あらためて「後半戦もよろしく頼む」という気持ちを言動で表現していた。ナインから聞こえてきたのは「ありがとうございます!」という声。実は指揮官から“粋”な差し入れが届けられていた。

添えられていた一言「監督からです」

 一塁側ベンチ内にずらりと並んでいたのは「博多 江藤家」のお弁当。ぎっしりとうなぎが詰まった一品で「監督からです」と添えられていたそうだ。選手だけでなく、裏方を含む全員へのプレゼントだった。さっそく味わった奈良原浩ヘッドコーチや古川侑利アナリストが「美味しかったです!」と口を揃えれば、西田哲朗広報も「後半戦に向けて激励の意味合いだったんだと思います」と深く感謝した。

選手にプレゼントされた「博多 江藤家」のお弁当【写真:竹村岳】
選手にプレゼントされた「博多 江藤家」のお弁当【写真:竹村岳】

 リーグ優勝を果たした昨シーズン。後半戦の“開幕”は今年と同じ7月26日で、相手はオリックスだった。選手1人1人と握手を交わしたのも、小久保監督にとっては2年連続。「別にみんなを集めて話をしたわけじゃないよ」というが、奈良原ヘッドコーチは「監督からそういうふうにしてもらうと、選手も感じるものがあるはずだから」とナインの思いを代弁した。チームの結束も固くなり、掴んだ白星。現場のトップが見せた計らいに、選手たちも最高の結果で応えてくれた。

3ランを放った山川穂高も「全部の試合が大事になる」

 8回に15号3ランを放った山川穂高内野手は「集中」という言葉を繰り返した。6月には1度、登録を抹消されるなど試行錯誤を繰り返している2025年。ここからはもう、形よりも結果が大切になることを深く理解していた。

「後半戦、全部の試合が大事になるので。打ち方うんぬんというのは、今年でいえば継続できていないところもありましたけど。集中力というのは、1日4打席、5打席なので。勝ち負けといった結果は自分で操作できないこともあるじゃないですか。1球1球に魂を込めるじゃないですけど。そういう気持ちを持ってやっていくだけです。ピッチャーもどんどん手強くなっていくと思うので」

 3ランを放った場面は、5点差がついた8回。確実にチームが勝利へと近づく中でも、1打席を大切にする姿勢を変えることはなかった。「どんな状況でも1打席は1打席ですし、高い集中力を持って臨めました」。6回には柳町の打球で一塁から一気に生還。逆転のホームを踏んだ激走も「しっかりやっていけたら、きょうみたいに(打線としても)繋がっていくと思うので。これから治療は受けますけどね」。冗談混じりに振り返ったが、本塁を目指して全力疾走を見せたのも、1点の重みを理解しているからこそだ。

 引き分けを挟みながら、今季最長の7連勝を飾った。小久保監督も「先発投手がしっかりとゲームを作ってくれていることが一番です。我慢をしながら、打線がワンチャンスを繋げていくという形ができている」と手ごたえを口にした。残り53試合。“うなぎのぼり”に調子を上げて、必ず歓喜を掴み取る。

(竹村岳 / Gaku Takemura)